「長崎県人の異常なる愛情」

または 「我々は如何にしてちゃんめんを食べる機会を失したか(笑 」

 

 

「ちゃんぽん」と「ちゃんめん」の違いについて講釈をたれる者などおよそ関西には
いないかもしれないのですが、誤解を恐れずに言わせて貰えるならほとんどの関西人は、
いや、九州または長崎に行った事があるものでさえ区別はできていないかもしれないのです。

それでは一体何がどう違うのか、と言われれば案外明確な定義は
あって無いような物なのですがまあ知る限りの解説をしてみます。
その話をする前にまずは大元の「ちゃんぽん」から話をしなければならないでしょう。

これを読んでいる人の果たして何人が「長崎ちゃんぽん」を食べた事があるのか
はなはだ疑問ですが下手したら知らない者だっているでしょう。
申し訳無いけど全然知らない人にはこの際我慢してもらう事にして一度でも
「長崎ちゃんぽん」と称する物を食べた事のある人に問いたい事があります。

「それがちゃんぽんと言う確信はありましたか?」

称する−と書いたのには実は訳があって、
京阪神では……少なくとも私が今まで大阪に引っ越してきてから今日まで、
「あ、これは確かにちゃんぽんだ」と納得できる店はチェーン店を含めて3軒だけでした。
他の店はどう言う訳か大多数が例外無く「具の多い五目ラーメン」だったので
以前は良く「看板下ろせ!」と怒鳴っていたものでした。
最近は諦めた事とわざわざちゃんぽんを頼まないのでトラブルは無いです。
先ほど言った「3軒の店」はそんな中で貴重なものでした。しかし……
そのうちの一軒は味が少し落ちたあと無くなってしまったのです。
堺店も玉津店も何時の間にか……今でも何処かにあって、
営業を続けているのでしょうか?見つけたら食べてみてください。
店の名は「長崎の鐘」です。味はやや落ちたけどかなり本場に近い味です。

もう一つは現在も関西に多数の店を構えた「リンガーハット」
赤いとんがった教会のような屋根が特徴なので見た事のある人、あるいは
食べた事のある人もいるかもしれません。
この店は本拠地を長崎に置く「浜勝」グループの子会社で九州では有数の
本場のちゃんぽんが安く食べられる店…だったのです。
だった…と過去形で書いたのはこの店が現在まともな味ではなくなったから、です。
その昔リンガーハットは九州各地と関東の主要道路沿いにかなりの店舗を展開する
長崎県人にとってはとても懐かしい店でした。関西に進出したときもどれだけ
嬉しかったかは言葉だけでは言い尽くせませんでした。実際、府内の店舗が10軒程度の頃は
ちゃんと長崎の味がしていましたから自分の中ではランク的にAクラスであったのは
言うまでも無く、その後ここまでランクを下げるとは思わなかったのです。
それでは現在は?
はっきり言って現在のランクはDの下、位でしょうか。
いや、勿論これは私個人の好みである事は言わずもがなですが。少なくとも
「大阪ちゃんぽん」とか言うものがあるとすればアレはアレで良いのでしょう。
当初長崎より高い料金設定だったにもかかわらず繁盛していたと思います。
営業時間も長崎や関東の店舗より短いままだったのに。
ところが今は早朝営業する店や(モーニングあります、と書いてた)
弁当の類を始めた所まで出る始末。
料金も今やちゃんぽん一杯390円に下がってしまったのに客は少ない。
九州人とは別の意味で関西人に愛想をつかされたのかもしれませんね。

最後に、知っている店の中で間違いなく正統派「長崎ちゃんぽん」が
食べられる店、それが「浜浪」です。
矢天使の「食い倒れ」に紹介されたので読んだ人もいるでしょう。
私は時々郷愁の念にとらわれると車をとばして片道15〜20分の道を
食べるためだけに行く事があります。
長崎県人にとってちゃんぽんとは単なる地元名物にとどまらない
別の感情が心の中に深く根付いているのかもしれないです。
詳しく紹介したいのは山々ですが語り始めるとかなり長くなりそうなので
割愛させていただきます。
一度本場の味を知りたい人、連絡を頂ければ案内します。
あるいは他にも「これは!」と言ういい店をご存知ならば、教えて下さい。

 

「浜浪」のちゃんぽん

本場と同じ味だそうです 

ところで皆さんの頭の中に「ちゃんぽん」と言われて思い浮かぶ名前が無いですか?
その名も「長崎ちゃんめん」チェーン店だし店舗も多いしリンガーハット以前から
関西進出していたので見た人食べた人も多いのでは。
しかしこの店のおかげで「ちゃんぽん」と「ちゃんめん」を同じ物だと思っている人、
かなりの数いますね。違うのかって?違います。
そもそもこの店は岡山から山口あたりを中心に店を出していた時には
ちゃんと「ちゃんめん」を扱っていたんですから。何が違うのでしょう。
皆さんは長崎のもう一つの名物「皿うどん」はご存知でしょうか。
カリカリの細い麺にとろりとしたスープをかけて食べるアレです。
あれが軟らかくなったら色のついたそうめんみたいになりますね。
簡単に言うとちゃんぽんの麺がああ言う感じの細麺になったものが
いわゆる「ちゃんめん」なのです。乱暴な解説ですが。
長崎では皿うどんにも細麺と太麺があって一般的な細麺を
「ちゃーめん」と称する地域もあり案外ちゃんめんの語源はここらかもしれません。

残念ながらこの店、関西進出してしばらくした頃店の名前に反して
「ちゃんぽん」の店に変貌しました。もっと残念なのはたいした味ではなかった
この店が他の店舗が潰れたり堕落したりしている間に何時の間にか
関西ではかなり「長崎に近い味の店」として位置付けられてしまった事です。
無論、私個人の中では、ですが。
個人的には……ちゃんめんの食べられる数少ない店として残っていて欲しかったんですがね。

それでもまあ関西の五目ラーメンの中では比較的長崎に近いのであって
本場の味にはなかなか届かないのが現実だと言う事も付け加えておきます。
風味だけは長崎風なので浜浪に行けないときは行く事もあります。
大阪にいる限りは浜浪に行ってしまうのは言うのでもないですが。

ああ、またちゃんぽんが食べたくなってきたですよ。

文責・土龍