BBC Atlantic Relay Station (英国領アセンション島)
    
    
     アセンション島はセントヘレナ島と並ぶ大西洋上の孤島で、セントヘレナ島よりは北方に位置する。セン
      トヘレナ島に流されたナポレオンを監視するために19世紀に英国軍が駐留し、それ以降大西洋上の重要な軍事拠点となった。1965年に英国は
      アフリカ・南米向の短波送信拠点として同島に着目し、最北端のEnglish Bayに「BBC South Atlantic Relay
      Station」を建設した。本格運用は1967年から開始された。本格運用当初にはMarconi社製の250kW短波送信機BD272型
      4基、ビームアンテナ20基が設置
      され、強力な電波は世界中で受信され、DXerの間で「アセンション島」は有名になった。大西洋の中央に位置することで、アフリカ方面にも南米方面にも1
      ホイップで電波が効率的に届くためにBBCの主力中継局となり、1989年には同型の送信機2基、5基の短波アンテナアレーが追加されて更に
      強力な短波中継局となった。送信所の電源は強力なディーゼル発電機で行われており、同時に島民800人に必要な水や電力も賄っている。現在約
      50名のスタッフがいるが大半はセントヘレナからの出稼ぎであるという。
      
       BBC World
      Serviceの放送は21世紀になると縮小の一途を辿り、一時廃止の噂も出たが、結局アフリカ向送信拠点としての位置付けは確保されることになり、
      2009年には1966-67年に導入された4基をクロアチアRIZ社製ソリッドステート型250kW送信機OR250K-02/Aに更新
      し、250kW送信機6基(但し主力はRIZ社製であり、真空管式のMarconi社製はほぼ予備用となっている)の体制を維持して現在に
      至っている。なお名称は当初の「South Atlantic」から「south」がとれて「Atlantic Relay
      Station」になっている。開設当時西大西洋のMontserratやAnguillaにも中継局があったが、これらが廃止となり、今後更に大西洋上
      に中継局を設置する予定がなくなったためかと思われる。現在の中継局は送信専門会社Babcock社の管理下にあり、BBC以外の放送局の中
      継も行っている。Radio Japanの中継も行われていたことがあった。BBCが毎年南極向に行う「Antarctic
      Midwinter
      Broadcast」の内一波はこの中継局から出ている。2011年以降は送信機の運用自体は自動化されており、現地時間の夜間は完全に無人運用となって
      いる。地元向にはFMの93.2MHz(10W)でも中継を行っている。
      
       現在は直径4.5mと12mのパラボラアンテナで衛星電波を受信して中継しているが、衛星中継網が確立する1985年以前は英国本土からの
      短波を直接受信していた。
      
       BBC World
      Serviceは原則として受信報告を受付ていないが、中継局は対応してくれる。この中継局も開設当初から受信報告にはレターで返信してくれたが、最近は
      印刷されたQSLシートを発行している。2017年初めまで船便しかなかったセントヘレナ島と異なり、アセンション島には第二次大戦中に米国
      が建設した飛行場があり、現在は英空軍の軍用機が英国本土との間を結んでいる。郵便が届くまで半年以上かかるという事態はなくなったがそれで
      も1~2ヶ月は要するようである。
      
      
       受信報告の宛先: English Bay, Ascension Island, South Atlantic Ocean ASCN
      1ZZ
      
       E-mail: jeff.francis @ babcok.co.ac
    
    
    (左) 2017年に発行されたQSLシート 受信報告後約2年後に届いた 発行日からも届くのに1ヶ月以上かかっている! 発行者は
    Communications EngineerのLuceana Leo Francis氏
    (中) 貼ってあった55ペンス切手 「eels」と書いてあるが描かれているのは「ウナギ」ではなく、大西洋に生息する金色のウツボ
    「gymothorax millaris」
    (右) Babcokのロゴが入った中継局印  モットーは「trusted to deliver」(届くことを信じて)
     ロゴの形はアセンション島に似ているような!
     
   
  
    
    
    
    (左) 1967年に受領したQSLレター 発行者はAdministrative
    OfficerのM.Tuner氏 この時は約4ヶ月で届いたが、1966年の試験送信の受信報告が、モンテビデオ・バルバドス経由で何と8ヶ月後に船便
    で届いたと追記してある。当時は米軍機による輸送しかなかったため、宛先は「c/o Partic A,F,B, Florida,
    U.S.A」と米国フロリダ州のPatric空軍基地経由となっている
    (中) 1989年設置のMarconi社製BD272型250kW送信機(真空管式)
    (右) 2009年設置のRIZ社製OR250K-02/A型250kW(ソリッドステート、DRM対応)
     
   
    
    
    
    (左) 送信所の表示板 BBCとBabcockのロゴが入っている (G3TXF HPのAscension Tripより)
    (中) 2基の受信用パラボラアンテナ (World Radio Mapより)
    (右) English Bayから見た送信アンテナ群 (同上)
     
   
   
  
    
    
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