第1回  完全なる『想定外』な出来事
 2005年、時の人としてそれこそ毎日のようにテレビに出倒していた、ライブドアの堀江社長。 東に資金難で困っている競馬場あれば、助けたいと名乗りを上げ、西に選挙ありと聞けば、刺客となって立候補。結局そのいずれもが成就できないままに終わっていた。
 そして去年の流行語大賞までいただき、まさに彼にとって2005年は大飛躍の年であった。そう、ここまでは想定の範囲内だったに違いない。

 しかし、グループ企業を買収しようとしたときに、とった手法が胡散臭いものだった。安い価格の現金で買い叩き、株式交換でライブドア株を渡す。買った企業の株式を分割して、一時的な「株価のインフレ」状態を作り上げる。時価総額が増えたように見せかけたあとに、グループ企業の株の売却利益を還流させる。これこそが、ライブドア流の錬金術だったわけである。
 勿論、このことが完成するためには、・買うべき企業がそこそこの業績を持っている必要 ・買収元であるライブドアにも相応の利益が必要 など、超えなくてはならないハードルがいくつもある。本来、何も生み出していないただのポータルサイト屋が、簡単に資金を捻出できるわけがない。そこで登場するのが、「偽計取引」である。簡単に言えば、利益の付け替えであたかも黒字であるかのように振舞うことである。実際、利益の付け替えなどは、上場企業ならずとも大なり小なりどこでも行っている行為であり、むしろそのことは検察側としても目くじらを立てるほどではないだろう。彼らが重視しているのは、「風説の流布」のほうである。特に、決算書類が虚偽の数字だった可能性が高く、利益の付け替えで会社を大きく見せたことは、投資家に対して間違った方向に目を向けさせていたわけで、こういった、粉飾決算で塗り固められた会社に明日があろうはずがない。
 現にライブドアの株は、特捜ががさ入れに入った翌日から、一向に値が付かない、ストップ安状態が5日連続続いている。こういう下がり方をして、まともに市場復帰した会社ははっきりいっていない。監理ポストに割り当てられることは必至で、早晩上場廃止になるだろう。

 そうなってくると、次に問題になってくるのは、株主への補償問題である。特に、業務提携を押し切られる形で結ばざるを得なかったフジテレビが、烈火のごとく怒っていることは想像に難くない。下手をすればそれこそフジテレビ自体の屋台骨まで揺らぎかねない出資をさせられたことにもなるわけで、フジテレビにどれほどの額の補償を吹っかけられるのか、見ものである。いずれにしても、1/23日夜の社長逮捕劇で、ライブドア問題は、収束に向かうどころか、放送界、証券業界、そして、彼を推薦こそしなかったものの、応援演説など事実上の公認に近い待遇で彼を迎え入れた自民党を含む政界にも大きな波紋を広げそうである。

 坂道を転がるどころか、バンジージャンプ並みの急降下を演じたライブドア社と堀江氏。もう彼が人気者、寵児としてブラウン管に出ることはない。そして、彼が嬉々として迎え入れられる場所はどこにもなくなってしまった。まだ30代半ば。これからの彼の人生設計の狂いは、想定外だったのではないだろうか? 
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