第6回 右を向いても左を見ても・・・。
  2005年4月25日は、関西圏の人なら、「あぁ」と納得できる記念日(よくないほうなので、記念日というのははばかれるが)として記憶にとどめておいでだろうが、それ以外の地区の方々にとっては、「あ?なにそれ」で終わってしまいそうな日でもある。
 その日とは、午前9時過ぎ、遅れを取り戻そうとしていた運転士の速度判断ミスから、カーブ進入時の制限速度を大幅に超過した電車が脱線、マンションに激突するという大事故の起こった日である。死者は乗客106人(運転士も死亡)、負傷者は乗客ほぼ全員という、JR発足以来始めてといえる3桁死者を出した事故である。

 事故はひとたび起こってしまうと悲惨である。また悪いことに、宝塚方面から直通で京阪奈地区という学研都市へ向かう電車だったこともあって、多くの学生が犠牲者に名を連ねていた。勿論通学だけではなく、通勤途上で事故死された方も多い。どの死を取り上げても、軽重などあるはずもない。もっと言えば、「死なずにすんでいたはずの命」である。
 だから、なのだろうか?昨日のワイドショーは、取材対象者こそ違うものの、例外なく、残された遺族の方々の軌跡を追っている。あまりにも「同じ内容」しかも、親族をなくした痛みを訴えかけているのだから、見ているこちらも胸が締め付けられる。今後の課題が山積していることなど、まったくないかのように、被害者と同じ目線で「報道している」というふりをしている。

 ワイドショーの特性は、「決して大きい対象には目を向けない」「感覚的な、直視的な映像しか流さない」ことにある。そもそも、事故被害者のほうが、JRより取材しやすいからである。106人も死者がいれば、ローラー作戦で行けばそのうち取材に応じてくれる人も出てくる。しかし、加害者であるところのJRは会社であり、放送局のスポンサーでもある(在版局では普通にスポットCMを見る)。仮に取材に応じたとしても「視聴者に共感させる」映像は望み薄である。ただ、こういう大きな事故だからこそ、会社の意見を大きく取り上げたり、直接取材してきてほしかった。それがなかったのは、残念としか言いようがない。

 「それでも電車は動いている」わけで、先般も、土木工事の工法不備とはいえ、天下の山手線で大事故につながりかねない事象が起こっていた。事故はいつ起こるかわからないし、起こったときにあわてない心構えも必要ではないかと思う。このゴールデンウイークにでも、もう一度現場に立ってみたいと思う次第である。
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