演劇集団キャラメルボックス「風を継ぐ者」(舞台)


数ヶ月ぶりに芝居をみた。劇場に入った時にふわっと檜の香りがすると、「ああ、これからどんな物語が目の前で展開されるんだろう」ってワクワクする。映画館が暗くなる時のあの瞬間とはまた違うんだ。

今日は日中、撮影が早く終わって、参加していた友達がこの「風を継ぐ者」が今日千秋楽を迎えると教えてくれて、薦めてくれたんだ。飛びついてしまった。演劇を見るのは初めてだという友達も一緒に連れて行くことにした。彼は幕末の時代のことに詳しくて、良く本など読んでいるので、新撰組が主役の今回の舞台なら初めてにはうってつけだ。
キャラメルボックスという劇団は、他の劇団や役者さん達のように器用に演技する様な劇団ではなく、どっちかというと勢いが強いんだけど、彼らにしか出せないストレートな味がある。真剣にまっすぐにいつも語り掛けてくる。高度な演技を賞賛するためや、小難しいことを批評するために見るんじゃなくて、ただストレートに、まっすぐ生きる大切さを実感しながら、楽しむエンターテインメント。特別な人じゃない、自分らと同じ等身大の人間達が一生懸命に魅せようとする娯楽。
そんな感じがとても好きなんだ。
友達も始まる前はだるそうに席で寝ていたんだけど、終わった時には「面白かったァ、見て良かったよ!」と意気揚揚としていた。僕が映画作るのもこれなんだよね。僕が始めて映画を見た時から彼が感じているこの感じを忘れられないから。

大人になるに連れ、年を重ねるに連れ、辛いことの密度も量も種類も、一人じゃ持ち切れないほどとんでもないものの連続になってくる。だから、みんな生きていく為に、正当化したり、斜に構えたり、変に受け入れて生きていこうとする。そうすることで大人になったと勘違いしながらね。
おろかなことだと思う。せっかくそれが辛いことだとか、いけないことだとか、寂しいことだとか感じられる感性を持っているのに、辛いものだから耐えるより、戦うより、正当化して楽に生きようとする。
世の中良い悪いじゃ片付けられない、そんなことのほうが多いのかもしれない。だからこそ大切にすべきものは大切に戦っていかなきゃいけないんだね。