April.25,2000 タルいけど面白いキングの短編集
スティーヴン・キングの短編集『いかしたバンドのいる街で』を読んでいたらば、途中で飽きてしまって、ほおっておいたのだけれど、気を取り直して最後まで読んだ。キングってこのところタルいんだよね。とくに短編ってダラダラ書かれると作品世界に入っていく前に、どうでもよくなってしまう。でもね、キングの短編って、けっこうストレートに化け物を出してくるから、ついつい読んでしまうんですね。
表題作の『いかしたバンドのいる街で』は、表紙でだいぶ内容をバラしているけれど、けっこう怖い。ハイウェイを一歩間違えて入ると、そこはミステリー・ゾーンだったって、アメリカってよくあるよね。でもね、『オールマン・ブラザーズのデュエイン・オールマン』はないよね、宇多村さん。
『チャタリー・ティース』は、2月にWOWOWで『クイック・シルバー』という二本の短編を1本にした映画で見た。あの映画化、けっこう原作に忠実だったんだなあ。もっとも映画の方は、前後にオリジナルのストーリーを付けて、もうひとつオチを加えていた。あの余計な部分をキングはどう思ったことやら。ねえ、安渕くーん、[チャタリー・ティース]っていう歯のオモチャってアメリカでは、けっこう売っているものなの?
『スニーカー』って、何かアンソロジーに入っていたことがなかったっけ? 録音スタジオのトイレで、毎日、一番端の個室トイレの下から、同じスニーカーが見える。そして、日に日にハエの死骸が増えていく話。なんだか『学校の怪談』の録音スタジオ版みたいな話。長崎くーん、スタジオのトイレに行くときは、気をつけてね。それと、宇多村さん、中で『アル・クーパーの伝説的な東京セッション』ていうのが出てくるんだけど、実際 そんなのないよね。あったら欲しいと思いません?
一番怖かったのが、『動く指』。洗面台の排水溝に[指]が住みついてしまっていて、その指が襲ってくる話。どことなく、ユーモラスなのだけれど、やっぱり怖い。おそらく映像化すると、マンガになってしまうだろう。昔、萩本欽一がコント55号最盛期に『手』という映画を撮ったことがあった。ある日、どこからともなく[手]が現れる話で、よく考えるとホラーなのだが、さすがに萩本欽一らしく、ギャグ映画にしていた。そういえば、『クイック・シルバー』のもう1本の短編は、クライヴ・バーガー原作のもので、やはり[手]が主人のて腕から離れて、暴動を起こすもの。これもちょっと笑ってしまったのだが、けっこう怖かった。
『ポプシー』も、どこかで読んだような記憶があるのだが、記憶違いか。親からはぐれた子供を誘拐してみると、その子供が、さかんに[ポプシー]とはぐれてしまって、早く[ポプシー]に会いたいという。[ポプシー]とは何なのか? コンパクトにまとまっている。
うまくオチをつけたなあと思うのが『献辞』。これどういう結末になるのか見当もつかなかった。
April.15,2000 下ネタって苦手なんですが
外出先で、突然時間が空いてしまった。次の予定までコーヒー・ショップで本を読んで時間を潰していたのだが、それも読み終えてしまった。何か軽く読めるものはないかと本屋を覗いてみたら、『死ぬかとおもった』(アスペクト)という本が目に入った。
これは、林雄司という人が作っているホームページ『やぎの目』に投稿された文章を集めている。実は一時期、私も『やぎの目』はよく見に行った。ここは、投稿で作られているホームページで、プロのライターではない一般の人たちが、自分の体験談などを自由に語っていて、これがまた面白いのだ。インターネットでアクセスすれば読めるものを、わざわざ別に金を払って読むというのも、おかしな話なのだが、暇潰しには恰好な本だ。
私は、『わたしの好きなヘンな匂い』というのが好きだったのだが、『死ぬかとおもった』も面白い。肉体的、精神的に[死ぬかとおもった]体験を書いてもらって、最後の文章は「死ぬかとおもった」で締めくくるというルールで募集したもの。酒乱の父にナタで殺されかけたとか、通らないと聞かされていた電車のレールのトンネルの中を歩いていたら貨物列車がやってきて、ほとんど『スタンド・バイ・ミー』状態で危機一髪で逃げ延びたとか、本当に死にかけた体験もあるが、精神的に恥ずかしい体験をしてしまったというのが、圧倒的に多い。
ただですね、下ネタが多いんですよ。具体的に言っちゃうとウンコの話。子供ってウンコの話って好きでしょ。親に「そんな話するんじゃない」と怒られれば、ますます面白がってしたりする。私の小学生時代もクラスの子がウンコ漏らしたりすると、大騒ぎして喜んだりした。漏らした本人は、それこそ死にそうに恥ずかしがっているというのに。子供って残酷だよね。やがて、大人になるにしたがってこういう話はしなくなる。私はもともとこの手の話は苦手な方で、仲間と酒を飲みながらの話題にもなりにくいから、ホッとしていたのだが、こういう投稿を見ていると、みんな好きなんですね、こんな話。一般の雑誌などには載りにくい話題だが、インターネットでは野放し状態。ちょっと一昔前のラジオの深夜放送の投稿ネタがインターネットに移ったのかもしれない。