September.19,2002 フロム・ダスク・ティル・ドーン?

        高野和明の『グレイヴディッガー』(講談社)を一気に読んでしまった。悪党の八神が、突然に善行に目覚め、骨髄ドナーとなる。HLAが一致した相手がみつかり、病院へ骨髄を提供しようと向う道すがら、金を借りようと赤羽の知り合いの家を訪ねると、相手は無残に殺されていた。その瞬間から、八神は正体不明の団体、それに不気味な殺し屋、さらには警察にまで追われることになる。赤羽から病院のある大田区の六郷まで、東京の北の端から南の端まで、こうして一晩かかっての移動が始まる。

        ノンストップで続くアクションに夢中になりながら、どうして八神は追われるのだろうという疑問がつきまとうのだが、これもページをめくるうちに、徐々に明かになっていく。出来事が一日目の夕方から、翌日の早朝までという濃縮された時間内で展開され、読む者も一気に読んだあとはヘトヘトにされてしまったが、読後の爽快感、開放感もいい。

        個人的な好みで言うと、もう少し長くてもよかった。改心して骨髄ドナーになるという主人公の、悪党であった部分をもう少し書いてあると、より面白かったのではないか。オーディション詐欺程度の悪事ではなく、警察にも知れない『悪党パーカー』ばりの強盗だったりした過去があれば凄みが増した気がする。

        それにしても、超人グレイヴディッガーの正体が最後まではっきりとはわからずに終わるのは、好みが分かれるところ。私はこれでいいと思うけど・・・。理に落ちないホラーとして、十分に面白くなっている。休日の夜に読み始めて、翌日の朝に読み終わった。ちょうどラストシーンが現実の時間帯と重なって、ますます満足感が広がった。



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