February.15,2006 『推理小説』 秦建日子 河出書房新社
今年の1月から放送が始まったテレビの篠原涼子主演の連続ドラマ『アンフェア』の原作本。発売が一昨年の暮で、そういえば買ったのを憶えているが読んでない。これまた部屋の隅に積み上げてある本の山から引っ張り出してくる。テレビ化されたこともあって、すでに文庫化されているのだから、高い買物になってしまった。
テレビの方を先に観始めてしまって、読むのがあとになってしまった。ページをめくってみて、あらら、これ、300ページくらいしかないのね。しかも行間がスカスカ。6ページも費やしてでっかい字で脅迫状を載せている部分まである。アンフェアなんじゃない(笑)? ドラマの方はどうやら11回に渡るらしいのだから、これ、どうやったら、そんなに長く出来るのだろうと思って読み進めていったら、テレビでは4回までのところで小説は終わっている。それに、テレビにはもっと大勢の登場人物がいた。ちなみに私はまだ『アンフェア』の4回以降を観ていないので何とも言えないのだが、違う事件の話に発展していくのだろうか?
作者は演出家、脚本家で、これが小説デビュー作。スピーディな展開はいかにも脚本家らしいが、やや文章が荒っぽい気がする。小説を読んでいるというよりは、読みやすくした脚本を読まされている感じ。そのへんが物足りないのだが、まっ、これから『アンフェア』の方で楽しませていただきますか。
February.5,2006 『暗く聖なる夜』 Lost Light マイケル・コナリー 講談社文庫 上下各800円
このところ、さっぱりミステリを読まなくなったとはいえ、マイケル・コナリーは読み続けており、本屋で新刊を見つけると購入する。かといってすぐに読むわけではない。読み始めれば面白いのはわかっているのだが部屋の片隅に積み上げられている本の山に置かれることになる。「今度のは今までで一番面白いよ」という声まで聞こえてきて、去年の『このミステリがすごい』やら『週刊文春』やら、講談社の『IN POCKET』やらで、ぶっちぎりの1位。やっぱりね。年が明けて年始を越してから、ようやく重い腰を上げて、このハリー・ボッシュ9作目にとりかかる。いやね、コナリーっていいんだけれど暗いでしょ。そこへきて、このタイトル。[暗く]って入っている上に[聖なる] [夜]ですよ。もう、これで内容は明るく楽しいものじゃないのがわかるってものじゃないですか。
『暗く聖なる夜』の原題は、Lost Light 翻訳版のタイトルは中に出てくる、ルイ・アームストロングの『この素晴らしき世界』What a Wonderful Worldの中の歌詞からとったもの。原題もいいが、この日本版タイトルもいい。上巻はなんだか物足りない感じでチンタラ読んでいたのだが、下巻に入ったところで登場人物のひとりが、この名曲を歌うところがあり、そこから一気に話が面白くなる。もうラストに向けて私の頭の中はこの曲が流れっぱなし。真犯人が明かされたときには、絶好調でこの曲が頭の中で鳴っていた。それにしても、やはりなんて哀しい話なんだろう。
クライマックスでのアクションも用意されているし、ボッシュの別れた妻エレノア再登場というお楽しみもあって(ボッシュってシャイなんだよね)盛りだくさん。ただちょっとストーリーが複雑で、FBIやらテロ対策組織がからんできて、ややわずらわしい感じ。ボッシュ・シリーズはこのあと新作が2冊翻訳を待っていて、この先ボッシュはどうなっていくんだろう。エレノアはどうなるんだろうと期待は高まる。でもねえ、やっぱり出てもしばらくは本の山に積んでおくことになるんだろうなあ。気分が乗らないと手が無い。私にとってコナリーってそういう作家なんです。