January.4,2007 引きずり回される快感
ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズ6作目『12番目のカード』(文芸春秋)。もう、こちらもディーヴァーのカメレオンの出し方には気をつけているから、おそらくディーヴァーも、簡単には気がつかない出し方を考えているのだろう。今回も読者の考えの裏の裏を読んでいるようなフシが見える。今回の最大の謎は、ただの普通の女子高校生の命をなぜ殺し屋が狙っているのかというところ。それをディーヴァーは読者をズルズルと引っ張りまわす。「ははあ、それが真相なのかあ」と思わせておいて、さらに読者をズルズルと引きずりまわす。
それで、いよいよカメレオンのご登場だ。一匹目のカメレオンは、もう、そんな手もありかよというくらいな驚き。それだけじゃ済まないのがディーヴァーだ。二匹目、三匹目のカメレオンも隠れているから驚く。もう絶対に騙されないぞと構えて読んでいるのに、ディーヴァーは読者の裏の裏をかいてくる。
それにしてもこれ、たった二日間の出来事なんだよね。その割には、いろいろな事件があまりにもスピーディーに起きすぎてやしないかい? まっ、いいけどね。
一番最後に出てくる真犯人は、あまりにも登場の仕方が唐突って感じでしたね。それでいて読後の心地よい疲労感はなんだろう。今や、ディーヴァーはミステリ界最高のエンターテイナーに違いない。