December.18,2007 すっきりさせてくれる、あの事件の後日談的展開

        ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズも、もう7作目。『ウォッチメイカー』は年末のベストミステリ選出にも、必ず上位に入っている。

        連続殺人犯ウォッチメイカー。犯行の手口は残忍。殺しを楽しんでいるかにみえる。現場には置時計とメッセージが残されている。さあ、リンカーン・ライムとウォッチメイカーの知恵比べの始まりだ。と思って読み始めると、少々の戸惑いが。いきなり二つの殺人事件が起きたあとは、第三の殺人がなかなか起こらない。これもライムがウォッチメイカーの犯行の先を読んで阻止しているのか、それとも・・・。

        新キャラクター、尋問のプロ、キャサリン・ダンスの登場が面白い。実に今回の事件、キャサリン・ダンスがいなかったらどうなってしまっただろうというような展開。次回作はスピンオフで、このキャサリン・ダンスが主人公になるというから楽しみ。

        さて、いったいこの話、どうなっちゃうのだろうと思い始めたころに、あれれれれという展開になる。それまで見ていた風景がガラリと変わってしまったような不思議な感覚にされてしまう。いったいこの事件、なんだったんだとおい始めたところで、まだまだ100ページ以上残している。ディーヴァーが何の考えもなく、こんなにページを残すわけもなく、またまた読者は引きずりまわされることになる。

        お得意のカメレオンは、今回もいる。一匹はおそらくこの人物が登場したところから怪しいと思うに違いない。だがディーヴァーはそんなことも織り込み済み。読者を翻弄し続ける。そして、この物語の裏にいる人物を知ったときには、本当にびっくりしてしまった。シリーズの中で以前にも出てきたある人物。それがまた、ここにきて顔を出すのだ。憶えているぞ、この人物。読んだときに、この人物のくだりが、後味が悪くて仕方なかったのだ。それを憶えている読者を想定しての、うまい決着の付け方。だからシリーズものは1作目から順番に読まなくてはいけないのだね。


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