September.1,2008 夏の午後、一気読み
暑い夏なので、楽に読めそうなものを文庫本のコーナーで物色していて買ったのがジェイムズ・リーズナーの『聞いてないとは言わせない』。ページ数も少ないし、あまり考えないで読めそうな軽い内容かなと思ったからである。日曜の午後、扇風機を回しながらページをめくった。
表紙を見て想像したのは女スパイもの。小説が始まるとアメリカの田舎町にやってきた青年。彼はひとりで農場をやっている女性のところに住み着く。フラリとやってきたように見せかけて、この農場が目的だったことは読者にはわかっている。やがて、青年と農場主は男と女の関係になっていく。そこへ銃を持ったふたりの男がやってくるところから話がただならぬ方向へ向って行ってしまう。
農場主の女性はこのふたりの男と、警察官を殺してしまう。いきなり始まる逃亡劇。読んでいて、「ああ、これはリチャード・スタークだな」と思った。数人の強盗がチームを組んで現金輸送車を襲う話の後日談。仲間のひとりが裏切って盗んだ金を独り占めにしてしまう。それを追っかけてくる、ほかの中間たちという悪党パーカーを読んだ者なら、ああいつものねと思うはずのお話。短いところもスタークみたい。主人公が女性なところが新味だ。スタークも女性を主人公に据えたスピンオフを作ればよかったのになあ。
女性主人公ということで、あるいは映画『キルビル』を思わせるところもあるかも。ラストの展開も、「おおおっ」とい趣向が用意されていて、満足感たっぷりの夏の午後ではあった。ふああ、そろそろ夕方。あれっ?夕立ありそうだ。