June.30,2009 面白いとは思うけど
ジョン・ハートの前作『キングの死』を読んだときは、「なんだかなあ」とあまりピンと来なかったのだが、この第2作『川は静かに流れ』は、さすがMWA受賞作だけのことはあり、飽きさせずに読ませる。しかし、読ませることは確かなのだが、私は結局こういう話、苦手なんだと思う。毎日、さて読もうと手に取るたびに、先を読み進めたくない自分がいる。それは、この小説がつまらないからではない。小説として、とてもよく出来ているし面白い。だが、それと、この話を喜んで読み進めたいかは別の問題。
主人公は20代の若者アダム。ニューヨークで、その日暮らしのようなことをしているのだが、故郷の親友から相談があると電話をもらい、あまり気乗りのしないままに5年ぶりに故郷へ帰ってくる。ところが、この親友はなぜか姿をくらましてしまっている。
いかにも典型的なミステリのオープニングだが、このあと主人公が襲われたりするあたりもよくあるパターン。しかしこの小説の面白さは、この主人公の家族の問題。簡潔に書こうとすると人間関係が複雑なのだが、読んでいるとそうでもない。とにかく八方塞(ふさがり)みたいな関係に読んでいて、鬱々としてくる。
暗いなあと読み進めるうちに、話がどんどん嫌な方向に進んでいくのだが、それで嫌になって読むのをやめてしまいたくなるかというと、そうではない。こういう小説って困るんだよねえ。で、ラストも一応スッキリと落ち着くところに落ち着くのだが、なんだか、やるせない。体調のいいときに一気読みする方がよかったな。