November.29,1999 東海林さだおのファンです 

        東海林さだおの描く漫画は、あまり好きでないのだが、エッセイは大ファン。本屋で新しいエッセイ集が出ていると、ニマッとして迷うことなく手に取り、レジに向かってしまう。カバーをつけてもらう間も、ついニマニマ。店員さん、気色悪がっているだろうな。『明るいクヨクヨ教』(文芸春秋)は今年の始めごろ買ったのだが、ゴチャゴチャした部屋の中にまぎれ込んで、見えなくなってしまった。先日、部屋の大整理をしていたら、押入の中から出てきた。

        今回も、ショージ君節はあいかわらず。この人、とくに食べ物の話題になると、異常に面白くなる。本書でも、『築地魚河岸見学ツアー』『行くぞ! さつま揚げツアー』『松茸山で松茸三昧』『秋田音頭を食べる』『西瓜をめぐる冒険』といった食べ物ネタが、やはり面白い。

        蕎麦屋の話が出てくるので、それについての、私からの弁明。『順序大研究』の中で、蕎麦屋のメニューは、もり、かけから始まって天ぷらそば、鍋焼きうどんに至る。これは値段順。安いのから高いほうへという基準。ごもっとも、その通りでございます。蕎麦屋というのは、もり、かけが基準で、それにどんな具が乗るかで値段が変わってくる。他の飲食店に比べ、はっきりしています。フェアでしょ(何がだ?)。

        あと『フタを叱る』で、出前を取ると、フタでなく、ラップがしてある。あれはフタと呼べるのかというご指摘。ごもっとも。以前は、うちでもフタをしてました。でもねえ、フタって出前すると完全じゃないから、汁がこぼれるのだ。届いた時は、汁なしの蕎麦ということになってしまう(そんなことないか)。ラップの出現はまさに革命でしたね。


November.22,1999 相変わらず、東野圭吾は小説がうまい

        『秘密』は、私の周囲では、あんまり評判よくなかったけど、私は、うまいなあと思いましたね。最後が想像ついてしまうのが難ですが、こういう発想がよく浮かんだものだ。東野圭吾は、今乗っている日本人作家のひとりだ。『秘密』を嫌った仲間が新作『白夜行』をばかに誉めている。さっそく、本屋に走った。

        『白夜行』(集英社)は、確かにネタを割ってしまう恐れががあって、多くが書けない。元々、推理小説のたぐいが、たるいなあと感じるのは、犯人がわかった後で、えんえんとトリックやら動機やらの説明が続くことで、あんまり長いと「もう、いいや」という気になってしまうこと。『白夜行』のうまいところは、読み始めてしばらくすると「んっ、この小説は何をやりたいのだろう?」という気にさせ、「ははあ、そういうことかあ」と気づいた時に、「果たして、どう終わらせるのだろうか?」と段々、気にならせる所にある。というのも、小説が進むに従って、以前の事件をまったく解明しないまま、次々とさらなる事件が起きていくのである。

        生嶋猛が言ったが、もう何ページも残ってないよという所まで来ても、何ひとつ片がつかないでいる。さすがに、根本になった重要な部分は最後になって明かされるが、放りっぱなしの部分がいくつかあって、「後はわかるでしょ」と、くどい説明をはぶく。そしてあざやかなクライマックス。ひとこと言い残しエスカレーターに消える、ある人物の姿。う〜ん、うまい。多くが書けなくて説明になってないけど、やはり東野圭吾は、うまい小説書くよ。

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