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下川博『弩』

 南北朝時代、農村を襲ってくる悪党に立ち向かう農民の話。黒澤明の『七人の侍』を彷彿とさせる物語だ。第一部、第二部に分かれていて、第一部は貧しい農村が、交易を起こして、どんどん豊かになって行く過程が描かれる。

 第二部が、いよいよ襲ってくる悪党軍団との闘い。農民たちの武器は、弩と呼ばれる、いわゆるクロスボウ。日本ではあまり広まらなかったこの武器が実は入っていたという事実に驚かされた。またなぜ広まらなかったかの説明もあり、なるほどそういうものかと思う。

 クロスボウは接近戦にならずに相手を仕留めることができ、しかも命中率が高い。武術に堪能である必要がなく、それでいて破壊力のある武器は他ににいと思わせられる。

 だが、ただクロスボウを使えばいいというだけでなく、この小説はこの作戦の指揮を執る男の作戦の上手さだ。クライマックスの面白さは、まさに本が手放せない。もっと長くてもよかったのに。映画化されないかなあ。

2009年10月11日記

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