山田風太郎『風来忍法帖』 山田風太郎が読みたくなった。それも忍法帖ものでまだ未読だったやつ。本屋に行ってみると角川文庫から、山田風太郎ベストコレクションというシリーズが始まっていた。来年いっぱいまでかけて24冊を出すとのことだが、忍法帖で今のところ出ているのが『甲賀忍法帖』と『伊賀忍法帖』の2冊。どちらも以前に読んではいるけれどどうしよう。再読するかなあと思ったのだけど、BookーOffにでも行ってみるかという気になった。 錦糸町のBookーOffに行ってみたら『風来忍法帖』があった。講談社の山田風太郎傑作忍法帖シリーズの一冊。新書版で1996年の刊行。懐かしいなあ。1100円のものが550円。本も新刊書みたいにきれい。 冒頭、放蕩無頼な香具師たちの様子が描かれていて、女性はこれは引くなあと思わせられた。これで怒って先を読まなくなってしまった人もいるかも。しかしそんな人は山田風太郎とは一生無縁だろうなあ。 次に出てくるのは風魔三人衆。戸来刑四郎(へらいけいしろう)の使う風閂(かぜかんぬき)という忍法にゾーっとさせられることになる。これで気持ち悪がって先を読めなくなってしまう人もいるかも。そんな人も山田風太郎とは無縁な人なんだろうなあ。 紆余曲折あって、後半は7人の香具師と7人の風魔くノ一対風魔三人衆の闘いということになる。とはいえ、風魔三人衆はおよそ化け物。単なる香具師と女忍者たちでは太刀打ちできないのは火を見るより明らか。さあてどうやって相手を倒すかが忍法帖の醍醐味。 そしてこれらの化け物を倒すには当然として犠牲が付きものになるのも忍法帖の宿命。化け物ひとりを倒すのに何人もの香具師と女忍者が死んでいく。死屍累々としたラストに虚しさが漂うのも忍法帖。それは『戦中派不戦日記』を書いた著者の原風景なのかもしれない。 ちなみに『風来忍法帖』の世界の背景にあるのは、忍城の水攻め。昨今話題の和田竜『のぼうの城』に語られている史実。『のぼうの城』も面白かったが、その史実を基にしてとてつもない小説世界を作り上げた山田風太郎はやはり偉大だったというしかない。 2010年11月13日記 このコーナーの表紙に戻る |