高野和明『ジェノサイド』 去年の話題作。 すごい小説であることは認めるが、それにしても取っ付き難い。590ページあるが、最初の200ページくらいは何度放り出して、途中下車してしまおうかと思ったか知れない。 物語の構成上でもあるのだが、何が起こっているのかわからないので、なかなか作品世界に入って行けないもどかしさがある。 しかも、その何だかなかなか見えてこない話が、ふたつに分かれている。ひとつは傭兵が集められてアフリカの奥地に潜入する作戦行動が描かれる。 もう一方は、突然死した父親の残した秘密の研究を受け継いだ日本人の若者の話。 このふたつが、徐々にベール脱いで全貌を現わして、何が起こっているかがわかってくるまでに、かなり辛抱を要求された。 かなり専門的な話も出て来て、単純な娯楽作ではない。それでもサスペンスはあるは冒険小説としての要素もあるは、もう盛りだくさんのテンコ盛り。読後の満足感は相当なもの。 そして読後の感動が待っている。人間の生と死の問題だ。 難病で苦しむ人を救うために、いったい何人の人が死んでいったのかという疑問も残るのだが、それが現実の姿なのかもしれない。 2012年5月2日記 このコーナーの表紙に戻る |