高田郁『花散らしの雨 みおつくし料理帖2』(ハルキ文庫) 入院中に差し入れてもらった本に、岡本さとるの『取次屋栄三』シリーズがあって、今まで文庫オリジナルの時代劇小説を読んだことが無かった私は、気軽に読めて、それでいてなかなかに面白いこのシリーズがすっかり気に入ってしまった。 「面白い、面白い」と言っていたら、「それじゃあ、こんなのもあるけど」と持って来てくれたのが高田郁の『みおつくし料理帖』シリーズ。上方から仔細あって江戸にやってときた少女、澪が料理人として成長していく物語。正直言うと一作目の『八朔の雪』があまり気に入らなくて、読み進むのを、ためらっていた。なにしろ出てくる料理が一作目はショボかった。そば屋の鰹節で摂った出汁ガラで作った料理なんて、私にはどうも魅力を感じなかったのだ。 それが、この二作目、料理が読んでいて食べたくなるようなものになってきた。作ろうかなと思えば作れそうだし、これはおいしいだろうと思える料理ばかり。特に最後の、ありえねえ、こと、忍び瓜は間違いなくおいしいはず。そうですねえ、味としては鶏肉を抜いたバンバンジーかな? キューリを細く切るのではなくて、キューリ自体を叩いて裂け目を入れる。さっと湯がいて、醤油、出し汁、酢、鷹の爪、そして胡麻油などの調味料に浸けておいて出来あがり。これに蛸を入れるとなお良し。間違いなくおいしいから。 それと同時に物語が格段に面白くなってきた。競争相手ともいえる料理屋からスパイとして送り込まれ、のちに澪の寝返る形になる、ふきという少女の存在。澪の幼馴染で、どうやら吉原の太夫になったらしい野江。親指と中指薬指で狐の形を作って「涙は来ん、来ん」と言う場面では思わず涙してしまった。これから先、澪と野江がどうなるのか気になってくる。そして、どうやら澪の心の中に恋が芽生え始めるラスト。ううっ、気になる、気になる。 2012年2月16日記 静かなお喋り 2月15日 このコーナーの表紙に戻る |