アームチェア

魔性の子

小野不由美
新潮文庫

 小野不由美のホラーは好きで結構読んでいるのだが、今までどうしても手が出なかったのが『十二国記』シリーズ。長いし、まだ続くらしいということもあるが、ホラーではなくてファンタジーだというのも迷っている原因。新潮文庫で新装版が出始めて、この『魔性の子』がエピソード0として刊行されたので、「シリーズを読み始めようか」と思って、とりあえずということで読んだ。

 これはホラーだった。序盤は学園もので、若い人向けに書いたのかなという感じで読んでいた。教育実習で母校に帰ってきた理科系の学生が担任したクラスで、どこか浮いている高里という少年の存在が気になる。高里はなぜか一年間神隠しにあって戻ってきたという過去を持つ。やがて、この少年にちょっかいを出す生徒が次々にケガをするという事件が起きる。最初のうちは、たいしたケガでもないので普通に読み進んで行くと、さらに被害者は続出。ケガの程度も尋常でなくなり、やがて大量の死人まで出始める。どうも高里本人が手を出したのではなく、何者かの手によって高里に危害を加えようとした者に災いが起こるらしい。

 いじめ問題が深刻化している今この本を読むと面白い。いじめた相手から、本人ではない何者かによって過剰ともいえる仕返しが来る。こういうことがあったら、いじめなんて無くなるかもしれない。

 高里は、神隠しにあった瞬間の記憶で、白い手に呼ばれて、どこか別世界へ連れて行かれたらしい。この白い手のイメージは怖い。そこからさらに後半になると、高里のうしろに得体のしれない不気味な化け物が出現しだすと、一気にもっと怖くなる。それがクトゥルー神話を思わせる世界との接点。これから、かの評判の『十二国記』に入るのかと思うと、読んでみたい気もするのだが、はて、どうしよう。ちょっと苦手な分野ではあるのだが。

2013年1月17日記

静かなお喋り

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