米澤穂信『折れた竜骨』(東京創元社ミステリ・フロンティア) 入院中に、見舞いに来てくれた人が差し入れてくれた本のひとつ。『このミステリがすごい』や『週刊文春ミステリ・ベスト10』などでも高評価と期待が高まる。ところが最初の方を読み出したのだが、どうしても作品世界に入っていけない。これはストレスになりそうだと本を閉じ、そのままになっていたもの。 こんなに評判が良いのだからと、退院してから再び最初から読みだす。剣と魔法の世界のファンタジーと、本格ミステリを融合させた小説。この手のファンタジーは、映画や、昔やったRPGゲームくらいしか知らないから、やっぱり小説世界に入っていくのに苦労してしまった。登場人物の名前と、そのイメージがなかなか頭に入って来ないのも、その原因かも。 骨格としては確かに最初に殺人事件が起こり、それを推理していく構成だから解りやすいのだが、呪われたデーン人っていう存在は何だ、とか頭の隅で「?」が渦巻いてしまい、どうもやっぱり作品世界にドップリというわけにいかない。それでも途中の戦闘場面あたりから夢中になりだして、この異世界を楽しむようになっていた。 そして、本格ミステリらしく、関係者を集めての探偵役の推理。ここでようやく魔法の意味が理解できたりで、我ながら読解力が落ちているのを感じるのだが。 異世界を舞台にしても、魔法があろうがなかろうが推理の本道は崩れていないのはさすが。そして真犯人は、意外な形で明らかになる。 やっぱりこういう世界って、文字では伝わりにくいというのが正直な感想。いっそのことアニメにしてみたら解りやすい気がする。スタジオ・ジブリあたりが、やらないかなあ。 2012年3月12日記 静かなお喋り 3月11日 このコーナーの表紙に戻る |