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道尾秀介『龍神の雨』
 血の繋がった両親が亡くなってしまった子供たち。ところが再婚していた血の繋がっていない親がひとり残っている。こんな家族が二組出てくる。この不自然な形の家族、当然として子供はこの血の繋がりのない親を疎ましく思っている。
 そこに起こる殺人事件。
 読み終わると、血の繋がりのない他人同士の親子ってなんなんだろうと思えてくる。もともと結婚自体が血の繋がりのない他人同士のもの。それが子供というものを通して家族というものが出来ると、血の繋がりのない結婚相手との共通項が生まれてくる。
 それなら、血の繋がりのない親子にも家族としての繋がりが生まれてこないかというと、これがなかなかそうはいかないらしい。
 この二組の家族があるきっかけで交差する。
 この小説はこの二組の家族の親と子供の間の誤解の物語だ。血が繋がっていないとは言っても、もっとお互いが深く理解しあっていたらと、絶望的な思いに駆られる。
 人間は血の繋がりのないものと一緒に親子関係を持てないものなのだろうか。
 悲しい、悲しい物語。

2009年8月23日記

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