中山七里『さよならドビュッシー』 同じ歳格好の人物ふたりが大火傷を負い、一方は死んでしまい、一方は助かったという設定だけでも、ほとんどの読者は「ああ、そういうことか」と気が付いてしまうはずだ。あとはどう読ませるかなのだが、犯人の意外性もなんとなくわかってしまうのは、このタイトルの付け方が悪かったような気がする。 それでも読ませる筆力はたいしたもので、クラシック音楽の演奏を文章で表現してみせる巧みさには舌を巻いた。私はあまりクラシック音楽には詳しくないが、音楽を文章で表現することの難しさはよくわかる。 結果的に探偵役になる人物の魅力も抜群で、この人を探偵役にしたシリーズが出来たら楽しいなと思った。 2010年4月30日記 このコーナーの表紙に戻る |