乾くるみ『セカンド・ラブ』 『イニシエーション・ラブ』の乾くるみ、恋愛ミステリー第二弾。『イニシエーション・ラブ』は最後の一行を読んだ瞬間に、一体何が起こったんだかわからずに呆然としてしまい、そこからジワジワと、「あーーー! そういうことか!」とわかって、思わず最初から読み直してしまった。「やられたー」とニヤニヤと快感が湧いたのだった。 というわけで、その第二弾。今度はどんな手で来るのだろうと期待いっぱい。読み始めるとこれまたフツーの恋愛小説。普段こういうジャンルには関わらない読書生活を送っている私には少々居心地が悪い文章が連なっている。「こんな小説読んでいて、いいのだろうか?」なんてね。なんだか罪悪感すら覚えるのですよ。 序章からして、もう仕掛けが始まっていたというのは後から気が付くわけだけれど、主人公の男性の視点から描かれて行く相手の女性が、双子だということがわかった時点から、ミステリ小説好きの読者は、ははあ、アレだなと頭に浮かんできてしまう。しかし乾くるみは、おそらくそんなこと計算済みなんだな。そこをさらに逆手に取る力技を隠しているんだ。 で、どう落とし込むんだと思っての最終章。あれよあれよの真相が事細かに語られて行ってしまう。「ああ、そういうことなのかあ」とニヤニヤと思っていると、最後の二行、いや四行かなあ。突然とも思える文章が待っている。「えっ! それって・・・そういうことなの!?」 途中で何気なく書かれていた文章が頭をよぎる。「そんなことのために、あれを!」 そして、序章が気になって、また読み直してみる。巧いなあ、これ。読み方によって、読み手は絶対に間違った読み方をしているもの。このあたり『イニシエーション・ラブ』にも近い手法なのだけれど、こんなところから使っているとは誰も思わないよなあ、普通。 帯に『イニシション・ラブ』の恋愛ミステリ再びみたいなコピーを付けられりゃ、前作を読んでいる読者は最後、最後と思い込んで読み進むんだろうしさ。 またまたやられました。それにしても乾くるみの書く女性はしたたかなこと。 2011年3月19日記 このコーナーの表紙に戻る |