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乾くるみ『スリープ』

 少女アイドルなるものには、ほとんど興味が無い。人の好みだからどうでもいいのだけれど、なんであんなにAKB48に大騒ぎしているんだろう。メイド喫茶なんてものにも行ったこと無いし、行ってみたいとも思わない。グラビアに登場するローティーンの美少女なんてものにも、中学生ね、くらいにしか思わない。ましてや、児童ポルノなんて、事の良し悪しはとにかく、興味が無い。

 乾くるみという作家は実は男性だと知ったのは最近になってからで、そういう事実を知って思い返してみると、『イニシエーション・ラブ』も『セカンド・ラブ』も、実にしたたかなヒロインが出て来て、このしたたかさは実は男が書いてこそなのかと思ってみたりする。

 『スリープ』は簡単に書いてしまうと、天才的な頭脳を持つ中学生の美少女が、事件に巻き込まれ、冷凍睡眠されてしまって30年後に目覚める話だ。乾くるみの本の装丁はみんなきれいで、いかにも女性作家の本のように見えるし、そんなものを予感させるのだが、中身はけっこうエグかったりする。『スリープ』には、冷凍睡眠された少女を巡って、様ざまな人物が群がっている。ネタバレになってしまうので、あまり詳しくは書けないのだが、ようするに中学生の美少女フェチたちの群れである。

 物語は一直線に進んでしまうのかと思って読み続けていると、十章からなる章割りの九章に入ると、「えっ!」という展開に、頭の中が引っ掻き回された気になる。ようやく整理がついて最終章に入って作者の狙いに気が付くことになる。気を取り直すと、今までいくつもの伏線が貼ってあったではないか。今回も、作者の罠にまんまとハマっていた。

 最終章は辛い。美少女フェチたちの末路。そしてまたも感じるのは、ヒロインのしたたかさ。今回は自然の流れで自分の道を進んだだけのヒロインなのだが。

2011年7月30日記

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