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『蕎麦処 山下庵』山下洋輔
 ジャズ・ピアニストの山下洋輔は以前、全冷中などということをやっていたので、冷やし中華好きなんだと思っていたら、実はかなりのそば好きなのだと知ってびっくりした。この本は山下洋輔が、そば好きの著名人に、そば及びそば屋を語らせた本だ。

 書き手によって、それぞれアプローチの仕方が違うのだが、面白かったのはやはり椎名誠の『殺したい蕎麦』。高級店での一杯のそばの量の少なさに憤慨している文章だが、さすがに書き方が上手い。

 あとは、やくみつるの『蕎麦をめぐるギモンの数々』。中でも、冷やしたぬきの具が店によってまちまちだというのはごもっとも。ウチでは、揚げ玉(天カスという言い方は嫌だな)、キュウリ、もやし(から炒り)、錦糸卵、蒲鉾、ゴマ。これがベストだと思っているからですけどね。

 いい話だなあと思ったのが林家正蔵の『出世と蕎麦屋』。前座時代、鈴本演芸場裏のそば屋で、トリをとる師匠がいつも大ざると玉子丼を食べさせてくれた。ある日、お金に余裕があったので、そば屋に入り天ぷらそばを注文したら、ある高級店では、「前座に食わせる天ぷらそばはない。二ツ目になってから来い」と言われ、大衆的な店では、天ぷらそばをだしてくれたけれど、「二ツ目になったら払ってくれ」と料金を取らなかったという話。でもねえ、私がそのそば屋だったら、また別のことをするのだけど、まあ、そのことは書かないでおこう。

2009年9月21日記

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