幽女の如き怨むもの 三津田信三 原書房 表紙の絵が怖い。特に読んでから見ると怖い。 四部構成の半分近くを占める第一部が抜群に面白い。戦前の遊郭の様子が、ひとりの遊女の目を通して描かれていて、これだけ独立して読んでも面白い。よく調べてあるし、それをうまく物語の中に溶け込ませて使っている。この部分は、遊郭に売られた不幸な人生を押し付けられた女の哀れな物語でもあるが、同時に恋の物語でもあり、遊郭から抜け出そうとするサスペンスの要素もたっぷり盛り込んである。そして、幽霊の出現で話を引っ張って興味を繋げていく。 一部が戦前の話。二部と三部が戦中、戦後と続き。ある遊郭で三代に渡って緋桜花魁を名乗った三人の女の話が書き方を変えて繋がっていく。三人とも遊郭からの身投げ事件に強く関わっているのが謎になっていて、それが四部できれいに伏線を回収していって解決される。 メインのトリックともいえる、三代の遊女に関する、あることは、見抜けなかったなぁ。そうか、そういうことだったんだ。思わずニヤリ。でもこれって映画やドラマにはしにくいよね。 読み終わっての感想は、やはり遊女という存在の哀れさとしたたかさ。そして戦争というものに巻き込まれた庶民のある思い。 さらに、やっぱり表紙絵は怖いよ。 2013年2月7日記 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |