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2000 USA 116 Min. 劇映画
出演者
Guy Pearce
(Leonard Shelby - 記憶をなくした男)
Carrie-Anne Moss
(Natalie - 記憶をなくした男と現在付き合っている女性)
Joe Pantoliano
(Teddy / Johnny Gammell - 記憶をなくした男の友人)
Mark Bonne Junior (Burt)
見た時期:2001年8月
犯罪物。犯人の名前は明かしていませんが、ミステリー・クラブの人だったらこのテキストを読んで、映画を見ているうちにカンが働いてしまうかも知れません。できのいいスリラーなので、見る予定の人はこの先読まない方がいいです。
Memento というのは「記憶しなさい」という意味です。かなりクセのある作品で、1度ですんなり入っていける人と、2度、3度見ないと分からない人とあります。ドイツでは短期間公開され、劇場から姿を消しました。何か手続きの都合があってオスカーはだめということになっていたそうですが、予想外、2つノミネートされました。編集と脚本ですが、うなずけます。
犯罪映画で、簡単に言えば誰かが殺され、殺した人も殺されるという話です。問題はそれをどういう風に観客に提示するかです。普通は観客が犯人や被害者、または探偵と一緒に時間を追って事件を経験して行くか、犯人、被害者あるいは探偵が回想するという形で、観客も一緒にそれを経験するようにできています。ところがメメントでは、「記憶しなさい」なんてタイトルをつけておきながら主人公は記憶喪失症です。ショックからか病気なのか、10分以上前に経験した事はどんどん忘れてしまいます。アルツハイマーとは別にそういう病気が本当にあるんだそうです。
主人公レニーはどういうわけか妻が殺害されたということは覚えていて、犯人を追っています。そういう場合に記憶がどんどん消えてしまうというのは大きなハンディです。それでレニーことレオナード・シェルビーは大切な事はメモを取るか、身体に刺青してしまいます。それをたどって過去へさかのぼりますが、本人にはあまり実感がありません。目の前にいる人が15分前にレニーの財布を強奪したとしてもレニーは思い出せません。
こういう状況の中で探偵役を演じる主人公というのは珍しいです。ですから脚本賞のノミネートは当然です。監督がアイディアを脚本にしています。レニーの記憶がこんな調子なので、観客はレニーに従わざるを得ず、断片の記憶しか貰えません。ポラロイド写真を撮り、隅に何かを書きつける、それを後で眺めて何があったか考え込むわけです。観客はいい迷惑です。筋の通った話を組み立てることができません。その上話の半分は前から、残りの半分は後ろから始まります。
これだけでもけっこう疲れますが、後半になると監督がとんでもない結末を用意していたことが分かります。ある世界的に有名な推理小説の作家が生涯で1度だけこういう手を使ったことがあります。通の人が規則違反だと言って怒るような手です。そして結末を見ると、すっかり監督にしてやられたことが分かります。で、私が前半に書いた事も後半から見ると話がずれて来ます。
これを演じるのが渋い俳優ばかり。ガイ・ピアス、ジョー・パントリアーノ、キャリー・アン・モース。パントリアーノとモースは銃撃犯とマトリックスで共演しています。メメント は地味な画面、特殊効果ゼロ。低予算だったのでしょうが、非常に出来のいい作品です。ガイ・ピアスの演技とストーリーがよく組み合わさってぞっとします。パントリアーノはどっち側についているのか分からないような役、モースはマトリックスで大スターになった人とは思えない地味な演技です。
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