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2003 USA 85 Min. 劇映画
出演者
Joshua Anderson
(Kyle Walsh- Tooth Fairy に母親を殺された少年)
Chaney Kley
(Kyle Walsh - Tooth Fairy に母親を殺された青年)
Rebecca McCauley
(Margaret Walsh - カイルの母親、Tooth Fairy に殺される)
Emily Browning
(Caitlin Greene - カイルの同級生、子供時代)
Emma Caulfield
(Caitlin Greene - カイルの同級生、成人)
Lee Cormie
(Michael Greene - ケイトリンの弟)
Antony Burrows
(Tooth Fairy)
Grant Piro
(Larry Fleishman - 少年時代カイルとケイトリンを争ったクラスメート)
Daniel Daperis
(Larry Fleishman、少年時代)
見た時期:2003年3月 ファンタのオードブル
普通多少のことはあっても文句を言わず見るのですが、この作品には「フェアでない」というクレームをつけたくなってしまいました。
この種のテーマの映画は時々見たことがあります。「暗くなると死があなたを誘いに来るから、決して暗い所に1人で行ってはいけない」というプロット。多分にキリスト教的なイメージが入っていて、「死」という存在も最近別な映画で見たのと同じく人の姿に似せてあります。
まだ女性が床に届くような長いスカートをはいていた時代のアメリカ。子供が2人行方不明になり、近所に住む美人の女性マチルダが殺しただろうということになります。マチルダは結婚していますが子供がおらず、鯨獲りの夫は海に出たきり戻って来ませんでした。子供好きのマチルダは子供にクッキーをあげたりしており、好かれていました。暫くして家から出た火災の被害で顔に大火傷を負い、皮膚を隠すためにマスクをかぶり、光に敏感になっていました。(後記: 火傷をした人は本当にその後日光を避けないと命に関わるのだそうです。マチルダの行動は現代医学から見ると全く正しかったのです。知らなかった!)
ある日近所の子供が2人行方不明になります。子供がみつからないためマチルダは殺人罪の汚名をきせられ、首吊りのリンチに遭います。無実を訴えたものの無駄でした。リンチの翌日子供たちは無事戻ります。リンチをした住民はだんまりを決め込みます。みつかった子供たちは世間の重圧に耐えられず後に灯台の近くで自殺。リンチを行った男たちは不思議な状況で死亡。ここからマチルダの呪いが始まります。彼女は幽霊と化し、真っ暗闇にいる人を死の世界に引きずり込むようになりました。
それから100年ほどたった現代に近い時代、カイルという子供がこの「魔女」にさらわれそうになります。代わりに死んだのは暗闇に入ってしまった母親。まだ学校に行っていたカイルはただでさえ自分が狙われ、母親が代わりに死んだためショックを受けていましたが、その上に母親殺しの噂を立てられ、何年も精神病院へ。最近退院して、ラスベガスでライト技師の仕事をしていました(この青年の顔は若きウォーレン・ビーティーを思い出させます)。
そこへ当時の幼馴染のガールフレンド、ケイトリンから電話。彼女の小さい弟マイケルが暗闇を怖がり、当時のカイルと似たようなことになっているので助けてくれと遠くの故郷から電話して来ます。ためらった挙句助けにやって来るカイルは当時の悪い噂と戦わなければならない上、ケイトリンの弟を助けなければなりません。周囲は迷信のような話を信じない上、アメリカの西部か南部風の土地柄、保守的で村八分的な傾向もあります。
今や被害者になりつつあるケイトリンとマイケルはカイルの話を信じ始めていますが、他の人はカイルをフリークと呼び、安全対策の1番大切な武器である懐中電灯を取り上げてしまい、彼は新たに起きた死亡事件の犯人として警察に捕まってしまいます。本当は魔女にやられたのですが、そんな与太話を信じる人は保守的な町でもやはりほとんどいません。
魔女の今回の狙いはマイケル。そのマイケルは病院で怪しげな精神治療を受けるとかで、わざわざ暗闇に入れることになり、秒読みが始まっています。これを危険と考えカイルは警察でどたばたやった後、病院へかけつけます(警官の1人がフレッシュだった頃のラッセル・クロウを思い出させます)。
暗闇で襲って来る魔女は映画の中では Tooth Fairy (Zahnfee) と呼ばれており、レッド・ドラゴンの中で犯人が警察に呼ばれている名前と同じです(ドイツ語版)。 あちらは殺人現場の冷蔵庫のチーズに歯型が残っていたためについた名前です。
マチルダの亡霊は暗闇に立っている人間を襲うのですが、ストーリーが進むにつれ、亡霊自身が町の電源を切ってしまい闇を作るという風にエスカレートして来ます。いわくつきの灯台の光も消えてしまいます。
B級作品としてはまあまあ退屈しないようにできており、この辺でルー・フィリップ・ダイヤモンドでも出てくれば完璧という筋運び。もちろんハッピーエンドが待っています。
しかしどうもこういう西部、南部が舞台の作品にはなじめません。正当な言われもないのによそから戻って来たカイルに言いがかりをつける同年輩の友達がいたり、その彼が無茶な態度を取るのに誰も止めなかったりと、ローハイド、ララミ−牧場の時代からまったく進歩のないシーンを見せられ、銃砲関係の協会から表彰されそうなシーンがあったり。
もっと決定的なのは、無実の罪でリンチに遭ったマチルダの幽霊に対してここまで皆が敵対するというプロット。不当さに怒りこの世に化けて出る女性を供養せず、悪と決めてしまうあたりの強引さについて行けませんでした。欧州の中世の魔女狩りをアメリカに移したような筋でした。
日本人はあの世にちゃんと旅立てない死人を供養したり、死人にも思いやりがありますねえ。幽霊にちゃんと三途の川を渡ってもらえば、幽霊も成仏できるし、こちらの人間も静かに暮らせ、一石二鳥ですけれど。
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