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2002 Schweden/USA 101 Min. 劇映画
出演者
Jason Schwartzman
(Ross - スパイダーの客)
John Leguizamo
(Spider Mike - チンピラのボス)
Brittany Murphy
(Nikki - コックの女、ストリップ・ダンサー)
Patrick Fugit
(Frisbee - スパイダーの子分)
Mena Suvari
(Cookie - スパイダーの所にいるジャンキーの1人)
Mickey Rourke
(コック - ニッキーの男、化学に強い?)
Peter Stormare
(ガラの悪い警官、親分格)
Alexis Arquette
(ガラの悪い警官、子分格)
Deborah Harry
(ロスの隣に住んでいる女)
Eric Roberts (男)
Chloe Hunter
(April - ロスのおかげで金を稼ぎ損ねたストリップ・ダンサー)
後記: 記録はさらに更新。2005年8月現在では出演本数914、監督本数125。 ライバルの方は出演本数270、監督本数89で共に記録を伸ばしています。
見た時期:2003年7月
★ 犯罪撲滅キャンペーン映画・・・ではない
この映画は恐らくレクイエム・フォー・ドリーム、トレイン・スポッティングなどいくつかの作品と比べられるでしょう。ドラッグや社会の荒廃を扱った作品です。そして教育上この作品がアンチ・ドラッグのキャンペーンに役に立つかとか、監督はキャンペーンをしているわけではないとかいった話も出るでしょう。その種の映画です。
教育的な視点から見るとレクイエム・フォー・ドリームと似たり寄ったりで、さほど役に立たないでしょう。コカインをやらない人が見てその後もやらないということはあるでしょうが、そういう人はいずれにせよやらないでしょう。コカインをやっている人がこれを見て止める気になるか、・・・ならないでしょう。まだやっていない若者がこれを見てやる気になるか、やらないでおこうと思うか、それも結局その人の性格、生活環境の方が影響して、この映画のせいで始めたり、止めようと決心したりということはあまり起こりそうにもありません。批判しようと思う人はこの映画を材料に批判もできますが、これはコカインを止めるための映画でもなければ、勧めるための映画でもありません。一見それらしく見えますが。
この映画をコカインと切り離して見ることはできません。最初から終わりまでコカインずくめなのです。そういう意味ではまだレクイエム・フォー・ドリームの方がそういうシーンが少ないという印象すら受けます。私の軍配はしかしスパンの方に。教育問題、犯罪撲滅キャンペーンでないと分かって来ると、こちらの映画の方がずっと斬新で、おもしろいのです。そういう風におもしろい映画を作れる監督がなぜわざわざコカインなどというテーマを選び、こうも危ない演出をしたのかは謎。
★ 斬新
最初のタイトルの部分ですでに工夫が随所に見られます。映画が始まって暫くすると出演者が紹介されますが、実に親切な紹介の仕方です。イントロで一通り重要な人物を出し、少ししゃべらせておいてから、この人はこれこれという(役)名で、演じている人はこれこれという名前だと言う風に消費者の立場に立って分かり易く見せてくれます。これまでにこういう事やった映画はほとんどありませんでした。最近遊び心の見える作品などで時たま見るようになりましたが、今後も大いにこういう風にしてもらいたいです。せっかく映画に出て演技しているのだから、演じたのが誰か観客に覚えてもらいたいというのが出演者の本音でしょう。ストーリーが展開する前でも、映画が終わってからでもいいです。
画面はちょっときめが荒く、写真でいうなら ASA/ISO の数字の大きいフィルムで撮ったような感じ。ちょっとざらざらしていてきたなく見えるのですが、それがスタイルなのだと受け入れられる範囲です。後の方になって分かってくるのですが、これをきめの細かい鮮明なフィルムで撮ると、壮絶過ぎるかも知れません。
マジな部分とおちょくりの部分がぎりぎりのところで交差する作品で、たとえば悪い事をやって務所送りになるシーンなどは、半分冗談になっています。ここはレクイエム・フォー・ドリームの方がまじめな撮り方で、一応教育映画の体裁を整えており、スパンは笑いを取るようにできています。「自業自得で豚箱入り」という風にしてあり、自分のやった事を反省するというより、ドジを踏んだ、運が悪かったという描き方です。恐らく実際こういう事をする人はそういう風に考えるのでしょう。
★ 俳優陣
使っている俳優がなかなかおもしろい組み合わせです。主演の子を覚えている人はいるでしょうか。天才マックスの世界という少年を扱った映画があるのですが、その主演をつれて来ています。彼はあの作品でもこちらでも一見「普通のぼーっとした若者」という役なのですが、現実を把握する能力に欠けた人間という、深く考えると怖い役をやっていました。今回もほかの人間がかなりエキセントリックなので、彼はその中で割にまともそうなぼーっとした坊やに見えるのですが、中盤からそれは思い違いだったかと思えるようなシーンが出て来ます。
重要人物の1人スパイダーを演じているジョン・レグイザモは達者な俳優で、いろんな役をこなせます。スパンの役では四六時中悪態ばかりついています。インテリの役も行けます。最初特徴ある歯を見せたので、彼がアレクシス・アークウェットかと思っていたのですが、それにしては貰っているテキストがやけに長く、どうも変だ、しかし彼にも大きな刺青がある、などとあれこれ考えていました。実際にはスパイダーがレグイザモで、子分格の警官がアークウェットでした。刺青なんてのは映画では描くだけで本当には彫らないですし。
あまり親切でない警官はそのアークウェットとペーター・ストルマーレ。ストルマーレも本当はインテリのシェークスピア俳優なので、レグイザーモと一緒にハムレットでもやっていればちょうどつりあうのですが、アメリカ映画では変態か狂暴なギャングばかりやっています。今回は珍しくスウェーデン映画ですが、それでも典型的な悪役風の出で立ち。もっとも主演のお歴々はジャンキーで彼はまがりなりにもお上の僕。
女性軍では今注目のブリタニー・マーフィーとメナ・スヴァリが重要な役で出ています。マーフィーは美人ですが、この役はかなり汚い。美人が汚れるのを喜ぶ人もいるでしょうが、彼女がどんどんコカインを吸っている姿を見るのはあまり気分のいいものではありません。というか、誰が吸っていてもあんなものを鼻から吸入したら痛いだろうにと思ってしまいます。何せ私はちょっと前に自分で粉から餃子を作ろうなどという馬鹿なことを考え、したたか小麦粉を吸い込んでしまい往生した経験があるのです。ただの小麦粉でもこんな騒ぎになります。その上映画の後半を見ているとあれ、もしかしてクラックというもっと危ない粉なのではないかという感じでした。ああいうのはやはり止めておいた方がいいのではないかと思います。
さてもう1人の重要人物がミッキ-・ルーク。彼の作品はあまり見たことがなく、どことなく寡黙なクールな男という印象を持っていたのですが、この作品ではそのイメージとは違う役です。カウボーイ風のブーツを履き、若い女を連れていますが、本職は化学。コックという渾名で、宿泊先を台所にしてせっせと薬品を調合しています。ところがそれが上手く行かず時々事故を起こします。マジのハードボイルドの映画だと思っていると、こういう所でしてやられます。
結局騒動の起きる数日が過ぎて出演している重要人物の半分近くが警察のご厄介。1人はカッコ悪く重症を負って入院。もう1人はもっと悪いことになり、いわゆるハッピーエンドにはなりません。1人はまあ何とかこの町の地獄からは抜け出るのですが、それは次の地獄へ旅立っただけ。行った先に何が待っているかは他の映画を見れば大体分かるようになっています。
★ 馬鹿は死んでも治らない
早い話が「馬鹿は死ななきゃ治らない」といったストーリーで、あれじゃ死んでも治ってないなあという感じです。監督の才能はテーマの選び方ではなく、決めてしまったテーマをどういう風に料理するかという所にあるようです。こういう誉められたテーマでないものでも、やるとなったら才能ある人材を集めて来て作るという姿勢のようです。ちなみに脚本を書いた人たちはこれが初仕事のようです。監督も普段はあまり劇映画は撮っていないようで、音楽ビデオなどを作る人のようです。そのためか使う手段が斬新で、コカインを吸いこんだとたんに目が変になるシーンはレクイエム・フォー・ドリームをパクっておいて、それをレクイエム・フォー・ドリームのように惚れ惚れするような美しい目(ジャレット・レトやジェニファー・コネリーの目だったのできれい過ぎます)で表現せず、その後ラリった部分には大胆なアニメを使っています。ですから観客にはこれがジャンキーの幻覚だとすぐ分かるようにできています。こういう分かり易い表現がこの監督の方針のようです。
皮肉り方、おちょくり方にユーモアのセンスがあり、ブラック・コメディーとしての仕上がりはなかなか。しかしテーマがテーマなので日本で公開できるかは分かりません。ドイツではちょうど7月末に大きな野外映画館で見られました。ベルリンで有名なタウン誌が主催したようで、公開も間もなくでしょう。斬新という意味で、そして危ない麻薬を扱っているという意味ではトレイン・スポッティング的なトーンです。
後記 訃報: いかにも英国風の美人顔ですが、イタリア、東欧、アイルランド系アメリカ人。32歳で死亡。
直接の死因は肺炎と心臓麻痺。検査の結果その時点では強い鉄分不足の貧血が発見されています。私もかかったことがある病気で、本来は鉄分投与(錠剤など)ですぐ回復に向かいます。原因は私の場合年齢で、体内備蓄を使い切った時点で症状が現われました。私の年ですと同じ目に遭う人が多いです。マーフィーの場合はまだ若いので、年齢的な理由は考え難く、大事故で出血多量という話もなかったので、強度のダイエット、極度の菜食主義、知らないうちにどこかに癌や潰瘍ができていたなどの理由が考えられます。私のうちでは50%の割合で発生しました。幸い私は錠剤で回復しましたが、1人は命を落としています。
一時期原因は彼女の家の黴ではないかという話もあったのですが、後に取り消されています。彼女の夫も半年も経たず39歳で死亡したため出た話なのでしょうか。死因はマーフィーと全く同じ肺炎、心臓麻痺で鉄分不足も発見されています。同じ家に住んでいた2人の成人が半年を置かず、全く同じ原因で死亡したので、黴かどうかはともかく家に何かしらの原因があったという説は調査してみる価値があるように思えます。
私はマーフィーの作品は少ししか見えていませんが、見た限りでは女優としてもっと行けそうに感じていました。極端なダイエットを要求されたりする職業で、大変なのかも知れませんが、もう少し活躍するのを見たかったです。
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