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目撃 /
Absolute Power

Clint Eastwood

1997 USA 121 Min. 劇映画

出演者

Clint Eastwood
(Luther Whitney - 窃盗犯)

Laura Linney
(Kate Whitney - ルーサーの娘)

Gene Hackman
(Allen Richmond - 米国大統領)

Ed Harris
(Seth Frank - 刑事)

Scott Glenn
(Bill Burton - 大統領の護衛官)

Dennis Haysbert
(Tim Collin - 大統領の護衛官)

Judy Davis
(Gloria Russell - 大統領のスタッフ)

E.G. Marshall
(Walter Sullivan - 大統領の育ての親)

Melora Hardin
(Christy Sullivan - ウォルターの妻)

Kimber Eastwood
(ホワイトハウスの案内人)
Alison Eastwood
(絵画の学生)

見た時期:2005年6月

ご無沙汰しました。急に入院することになってしまい、1か月ちょっと間が空いてしまいました。今月から復帰しますが、暫くゆっくりしたペースになるかと思います。あしからず。

入院中テレビを借りて見ていたので、古い映画が見られました。

要注意: ネタばれあり!

大分古い映画なので犯人もばらします。見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

最近テレビで見たのですが、公開当時劇場でも見ています。テレビではやや短縮してありましたが、ストーリーに影響が出るようなことはありませんでした。ジーン・ハックマンがあの顔でなぜスターなのかと時たま考えたことがあったのですが、存在感が大きいです。イーストウッドは自分の身辺の問題を映画にしているのではと思わせる作品が続いていますが、これもその1つ。年を取って引退間近のプロ窃盗犯、娘とのコミュニケーションがうまく行っていない父親という2つのテーマを上手に作品に折り込み、ただの犯罪映画ではない仕上がりです。

「年を取って」というのは最近のイーストウッドが出る作品の大部分で扱っており、多くの国で高齢化社会が進んでいることを考えると、着眼点が良いです。日本人はその年代その年代にいろいろ格言があり、国全体としては上手に年を取って行く国民だと思いますが、西洋には年を取るということに抵抗するような考え方もあり、うまく行っていない例もあります。そこへこういう有名な監督が現われ、多少自嘲的なユーモアも含め《老醜をさらす》というスタイルにせず、《あのイーストウッドにも皺がたくさんあるのだ(それが普通なのだ)》と人に納得させるのは良いかも知れません。

 

娘と長い間疎遠になっていて関係修復を図る父親というのもこの作品の大事なテーマです。劇場用ではカットしていなかったシーンに、イーストウッドがストーカーのように娘の写真を撮り続けているシーンがあります。監督イーストウッドはこれを《父親の娘に対する愛情》という解釈にしています。こういう事をやられると娘としては気色が悪いかも知れません。テレビ版の方では直接写真を撮っているシーンは出さず、最後の方で父親のアパートを訪ねた娘が父親が飾っている自分の写真を見つけるというシーンだけにしています。

母子家庭で育った娘ケイトは父親ルーサーに対して屈折した考え方を持っています。現在は自立していて自分たちを放り出した父親を拒んでいます。父親が事件に巻き込まれてからは娘の命も危なくなり、それを守る父親の姿に娘が感動してようやく親子関係が元に戻ります。《子供をないがしろにして》という点がイーストウッドの私生活とダブルかなと思わせる点ですが、子供は11人いると言われている上、中には母親が自立した女性で父親無しでも十分やっていける人もいるとか。で、どの子供のエピソードを映画に使ったのかなどははっきり分からないようになっています。ただ、ここに出演しているアリソンが薬物中毒の危機に瀕した時は、おやじさんが心配して面倒を見たと聞いています。私生活を映画にされてしまう子供というのも辛いでしょうが。

★ あらすじ

さて、ストーリーの方ですが、思い切った内容です。女たらしの合衆国大統領が自分の育ての親に当たる男ウォルターの若い後妻と浮気。これからセックスという時に誤解が生じ、後妻は死んでしまいます。後妻が自衛のためにナイフを振り上げたため、シークレット・サービスが大統領を守るために後妻を射殺してしまうのです。取り敢えずはシークレット・サービスと大統領補佐官のような女性が現場を処理。賊が押し入って殺されたという話をでっち上げます。

折り悪くその時引退間近の窃盗犯ルーサーが家にいて、マジック・ミラーの後ろで一部始終を見てしまいます。自分も泥棒の端くれなので、この事件を警察に訴え出るようなことはするつもりはなかったのでしょう。ところが引退のために国を去ろうとする寸前、大統領が真っ赤な嘘をついて、妻を亡くしたばかりのウォルターを相手にテレビ・カメラの前で感動のシーンを演じたため、カチンと来ます。

シークレット・サービスの方でも現場を見た男がいたことは突き止めていて、ルーサーの身元が徐々にばれて行きます。

公式に捜査を担当している地元警察の方では何かおかしいということになって来ます。ただの刑事ではありますが、場数を踏んでいるので、血痕がどちら側につくかとか、死後死体をチェックした痕跡などを探り当て、話の矛盾が徐々に浮かんで来ます。その上シークレット・サービスが情報をくれと言って来るので、何か裏にあるかも知れないと思い始めます。

エド・ハリスはエキセントリックな役もやりますが、私はセスのような凡人の役の方が好きです。中年男のいい味を出しています。名探偵ではなく地味刑事ですが、ルーサーの娘にたどり着きます。ルーサーは大統領では相手が悪いと知っていますが、カチンと来ているので、大統領の犯罪を暴く気になっています。そこで気にかかるのはやはり娘の安否。

ルーサーとセスは直接接触しますが、セスにはルーサーが殺人犯という感触が無く、謎は膨らみます。そうこうするうちにシークレット・サービスの方は娘を餌にして親を釣ろうということで娘に悪の手を伸ばします。で、仕組まれた交通事故で入院。重傷です。ルーサーが来ると踏んでシークレット・サービスは医者に化けて病室で待機。しかしルーサーの方が1枚上手で、男を殺します。もう1人のシークレット・サービスは事件当時から警察に連絡しようと提案した元刑事で、モラルのかけらが残っています。重圧に耐えられずに「すまん」と書き残して自殺。1番腹黒いのは女性スタッフ。彼女は一筋縄で行かず、ルーサーは現場から失敬した被害者のネックレスを大統領名でプレゼント。本人が誤解して喜んでいるのに対し、パーティーに出ていた大統領は真っ青。このシーンはイーストウッドが気合を入れた皮肉と言えます。この女性は自殺をするようなやわな神経でないので逮捕。大統領は切羽詰って自殺します。

イーストウッドという人は女性に対してどういう気持ちを持っているのかが判断し難いと思っていました。しかし当人の中では矛盾が無いのでしょう。マッチョ的で嫌な男だという評判がドイツには立っていて、ソンドラ・ロックに対する扱いが悪いと雑誌で取り上げられたこともありました。で、男尊女卑のマッチョ男かと思うとそういうわけでもなく、強そうな女性とは仲良くしているようです。彼が補佐官のような悪女と、娘のような人物を描くのは、男にいい奴と悪い奴がいるように、女にもいい女と悪い女がいると言いたいからなのかも知れません。男女同権を女性に気に入られる方法でなく表現しているつもりなのかも知れません。

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