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Shooter / Atirador / O Atirador / Tirador / Shooter: El tirador / Tireur d'élite / Shooter, tireur d'élite / 辣手槍 / ザ・シューター 極大射程

Antoine Fuqua 監督

USA 2007 124 Min. 劇映画

出演者

Mark Wahlberg
(Bob Lee Swagger - 海兵隊出身の狙撃手)

Lane Garrison
(Donnie Fenn - 海兵隊時代のボブの観測手)

Kate Mara
(Sarah Fenn - ドニーの未亡人、看護師の勉強を止めて教師になる)

Michael Peña
(Nick Memphis - FBI新人捜査官)

Danny Glover
(Isaac Fitzsimmons Johnson - 退役軍人、ボブに大統領暗殺阻止の対策の助言を求める)

Elias Koteas
(Jack Payne - ジョンソンの部下)

Rhona Mitra
(Alourdes Galindo - FBI捜査官、メンフィスの上司)

Rade Šerbedžija
(Mikhayo Sczerbiak 別名 Michael Sandor - 死んだはずの狙撃手、足が悪いため車椅子を使う)

A.C. Peterson
(Stanley Timmons - 地元の警官、強盗に襲われ死亡)

Ned Beatty
(Charles F. Meachum - モンタナ州上院議員)

Brian Markinson
(Russert - 司法長官)

Michael St. John Smith
(Brandt - FBI 長官)

Dean McKenzie
(Desmond Mutumbo - エチオピアの大司教、暗殺の犠牲者)

Tom Butler (大統領)

Levon Helm
(Mr. Rate - 銃の専門家、ボブたちに助言)

Rebecca Toolan
(Mrs. Rate - レートの妻)

原作:スティーヴン・ハンターの極大射程 (1993年)
(シリーズの1作目らしい、1作完結の予定だったが、うっかりして10作書いてしまったらしい)

見た時期:2026年2月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ あらすじ

ボブ・スワッガーは米軍の狙撃手としてエリトリアで勤務中に予想外の数の敵に襲われ、相棒のドニー・フェンは戦死、自分は味方に見捨てられる。この戦いで米軍は予定の国の国境を越えて、隣国に侵入していた(違法扱いになる)。ボブは頭に来て退役。ワイオミングの田舎に引っ込む。

3年後 CIA 本部ではボブの履歴が大統領暗殺阻止に役立つと考え、山岳地方で1人暮らしていたボブを探し出して助言を求める。ボブの役目は大統領が現われそうな町のロケーションをチェックし、そこで狙撃があるとしたらどういう風に行われるかを専門的に説明することだった。ボブはそのためワシントン DC、ボルチモア、フィラデルフィアを調べ、報告する。ボブの判断だとフィラデルフィアが1番危なそうだった。

大統領にはエチオピアの大司教と一緒に野外で演説する予定が入っていた。当日ある(ケネディー事件を思わせるような)建物の上の階にボブ、ジョンソン、パインなどが集まり、任務をサポートする地元のティモンズ巡査も加わる。巡査はピストルのホルスターをきちんと閉めていなかったため、ボブに注意を受ける。大統領や大司教が現われた時、ボブは危険を察知し、狙撃手を撃つように言うが、関係者は動かない。それどころか巡査から銃弾が飛んで来て、ボブは負傷。ボブはとっさに窓から外へ飛び出し、落下するが死なずに逃亡。逃亡中に FBI 新人捜査官の車を奪い、その時に捜査官に「自分は騙された」と言い残す。

手配が回っているため、ボブはドニーの未亡人サラを頼って、怪我の手当てを頼む。(彼女にはドニーの命日に花を送っていた。)ニュースでは大統領は無事だったが、エチオピアの大司教が死んだと伝えていた。

警備中にボブに車を奪われたりとドジが続いていた FBI の駆け出し捜査官メンフィスは、ボブの言葉を気に留め、独自に調査を始めていた。ボブを暗殺犯とするにはやたら早い結論が出ていたことに違和感を持っていた。証言が出来そうな巡査はちょっと前に殺されていた。ボブはこっそりメンフィスとコンタクトを取り、調査を頼む。本当は入っては行けない部屋でこそこそ調べていたことがばれ、メンフィスは拉致され、自殺を装って殺される寸前だった。黒幕はジョンソン大佐。そこへボブが乗り込んで来て、メンフィスを救出。その後2人は協力して行動。

2人は銃の専門家レートを訪問して助言を求める。かつてケネディー事件で狙撃犯を地中に埋めたと本人が語る。そのためボブたちの話も絵空事と考えずに助言してくれる。観客には前半から車椅子に乗っている男が示されているが、レートはこの男がかつては狙撃手だったと言う。セルビアックという。ボブには以前の仕事中に見た記憶があった。

ジョンソンたちはボブを探しているうちにサラにたどり着く。サラはジョンソンの部下、ペインに人質に取られる。ジョンソンはボブたちがいずれセルビアックにたどり着くと考え、兵士をセルビアックの家の近くに多数待機させていた。セルビアックの家にボブとメンフィスが侵入し、質問を始める。セルビアックはもはやこれまでと覚悟し、ボブとドニーの任務の裏を語る。

エチオピアのパイプライン計画が村人の反対に遭い、強引に通すために村人400人を殺し、石油施設の下に埋めていた。エチオピア大司教はそれをアメリカ大統領の横で言おうとしたため、消された。ボブが3年前に就いた任務はその事件に直接関連していた。石油会社の希望で、モンタナ州上院議員ミーチャムが米軍を動かしていた。

サラが人質に取られているという言葉を最後に、セルビアックは自殺。ボブとメンフィスは大立ち回りをして、逃亡に成功する。

ボブたちはジョンソンたちと交渉に入り、サラとセルビアックの告白の録音を交換しようと取引を持ち掛ける。雪山で両者は対面。ミーチャム、ジョンソンたちは雪山に狙撃手を待機させていた。ボブはその狙撃手を狙撃して倒して行く。終わりの方ではボブがペインの指、次に利き腕を吹き飛ばす。ついでに足にも1発。解放されたサラは拾った銃でペインを銃殺。人質に取られていた時にひどい目に遭ったお返し。

追い込まれたミーチャムとジョンソンはボブを自分側にリクルートしようと試みる。話を断わり、さらなる犠牲者を作らないため、ボブは録音機を廃棄。ボブは FBI に捕まり、メンフィスとサラは元の生活に戻る。ミーチャムとジョンソンもお咎め無しで一旦話は終わる。

暫くして、司法長官、FBI 長官、ジョンソン、メンフィス、サラ、ボブが集まって会合が開かれる。ボブは一応逮捕されているのでオレンジの囚人服を着ている。メンフィスの説明、ボブの自分の銃を使った実演を見て、司法長官などはボブの釈放を決める。他方、ジョンソンとミーチャムも最終的なお咎め無しが決まる。

メンフィスが用意したアフリカの犠牲者の写真は確かに死者が大勢出たことを示していたが、アメリカの法律の及ばない場所での犯行なため、司法長官の権限では何もできなかった。関係者を起訴したいのはやまやまだが、「正義だけが通る世の中ではない」と言い、両者痛み分けとする。

欧州ならこの辺りでエンド・マークが出るが、アメリカではその先にちょっとおまけがつく。ミーチャムの家でジョンソンとミーチャムは祝杯をあげていた。ジョンソンはアフリカと似たような任務を南米で控えていた。そこへボブが襲って来る。上院議員の家だから護衛がいるが、皆殺し。ついでにジョンソンがミーチャムを殺したように偽装。家に火をつけるので、後で死体が見つかっても指紋の検査はできない。

★ ラスト・シーンの後で思うこと

アメリカ人向けのハッピー・エンドになるが、まだ若いボブが今後どうやって生活して行くのかが分からない。メンフィスはまた FBI に復帰する。この事件がきっかけで冷や飯食いになるか、上司が彼と似た考えで気が合い出世するかは分からないが、取り敢えず公務員として食べて行ける。最悪の場合でも FBI を退職して警官になるという可能性が残る。サラは恐らく殺人罪にはならず、教師の仕事に戻れるだろう。教師なら今の州で首になっても、まだ49も州があるから、どこかで仕事が見つかる。しかしボブは今後二度と暗殺計画防止の助言者になる気はしないだろうし、表に出て事件のコメンテーターなどはやりたくない性格に描かれている。そのあたりのオトシマイがついていない。

結構年を取ったり、身体障碍者になっても専門の助言者としてやっている男が2人登場しているから、そういう仕事で食べて行くか・・・。しかし助言を貰いに来る者が正義や平和のために働いているとは限らないし・・・、と適度な疑問を残して終わる。

★ 悪ガキだったウォールバーグ

彼は珍しく、ティーンの頃から成人するまでに殺人未遂、麻薬、アルコール使用、暴力事件など殺人以外はかなりの事をやり、その後歌手、ファッション・モデル、俳優、プロデューサーと堅気の仕事に転向し、映画関係の有名な賞にノミネートもされている。有名になり、後で落ちぶれる人がいる中、彼は警察沙汰などを先に済ましてから、まともな仕事に就いたという珍しい人。

私が最初に見たのはブギーナイツだった。役をよく理解して演じていたので、記憶に残っている。本人はこの役を引き受けたことを後悔したような話もあるが、私には他の俳優たちとうまく溶け込んで、いい演技だったと思えた。

私がまだ見ていないゲティ家の身代金では共演のミシェル・ウィリアムズとのギャラの差が極端で、ウィリアムズは1000ドル弱、ウォールバーグは1000倍を超える150万ドルと開いていた。こりゃ酷いというので、ウォールバーグは反省し、150万ドルを寄付に回した。まずいと思ったら謝る人に育ったらしい。

★ アクション映画となっているが

ミステリー・クラブの人にも十分おもしろい作品だと思う。所々にケネディー事件を思い起こさせるようなシーンや言葉が盛り込まれている。つい最近現米大統領の命令でいくつかの文書が公開されているが、この作品が作られたのは2007年で、当時の風潮を考えるとかなり思い切った設定。

また、本作品に登場する悪漢たちの犯行の理由が、当時は専門的なコメンテーターや、ジャーナリストしか知らず、一般人には訳の分からない話だったので、2007年の作品としてはかなり先頭を切っていた。軍が私的な利益のために他国で虐殺をしたり、利権を狙ったりする話は今でこそ一般人の話題にもなり、ユーチューブで取り扱われたりするが、当時はブッシュ(息子)大統領からオバマ大統領に移ろうという時代。インターネットもまだそれほど色々なテーマを扱っていなかった。

そしてエチオピアの大司教が狙われたのはこういった事件をもみ消すためと映画の設定ではなっているが、その大司教の役名のファースト・ネームがアフリカの有名な国の有名な司祭と同じというのも何となく意味深。

このようにこの作品はいくつかの現実のエピソードを思い起こさせるシーンが盛り込まれている。

★ ボブのシリーズ

原作は読んでいないのだが、1993年に出版されている。ベトナム戦争に従軍した後引退した元狙撃手ということになっていて、エリトリアやエチオピアにはなっていない。ある(公的な)組織からの依頼で大統領暗殺を防ぐための助言するという筋は原作と一致している。彼自身が暗殺犯に仕立てられ、逃げざるを得なくなる。ネットの情報だと、元々はシリーズ化を考えずに書いて、シリーズになってしまってからは2019年に狙撃手のゲームという作品も書いているようだ。今年3月には80歳になる予定。本人も銃には詳しいらしい。

★ ケネディー事件や米国の外の紛争

1993年というと、インターネットの民営化、商業化が始まりつつある時期。一応1995年からは民営化が完成しているが、実際に利用する人はまだ少なかったような印象で、この年からいよいよ新しい時代に入るというスタート点だったように思う。

国防用の ARPANET が大学と協力して作られたのが1969年。そこから独立した MILNET という軍用のネットができたのが1983年。その後も国防目的で使われるネットが出来たが、商業化はしていない。つまり、軍関係や科学関係の人が事務所に出かけて行ってそこで使う時代。電話も主として固定電話の時代。その時代に書かれたのが小説版極大射程

当時は現代に比べケネディー事件も他の海外の紛争も新聞、ラジオ、テレビ、個別の出版物でしか情報が入らない。普通娯楽番組をやっているラジオやテレビではまず扱わない。新聞も毎日の事件に忙しくて、あまり古い話を詳しくは報じない。そんな時代だったので、個別にノンフィクション作品として出版するか、ハンターのように小説に混ぜて扱うかしかない時代だった。

2007年の映画化の時にはインターネットが商業化されており、興味のある人が書いた記事を見ることができるようにはなって来たが、2026年と比べると詳しい記事は少ない。当時の関心はむしろ911事件の方だったように記憶している。少なくとも私はブッシュ大統領の反応をネットで見たことは覚えている。映画版では当然のように携帯電話や小型で持ち運びのできる録音機が出て来る。現代に近くなってはいるが、あの当時はまだ機密扱いになっている重大事件があり、2020年台になっていくつかの大事件の内容がようやく期限が切れて公開されるようになった。そのため現在では一般人でも、こういった事件の裏に誰がいて、どんな利権を謳歌していたかを知ることができるようになった。

私は映画版極大射程を公開から20年近く経った2026年に見たが、古いという感じはしなかった。敢えて言えば近年監視カメラが増え、顔の認識力も高まっているので、ボブが大都市で警察に追われると、結構あっさり居場所がばれるだろうとは思う。武器について言えば、最近までは腕利きの狙撃手が重宝されたと思う。そういうスナイパーが犯行直後どうやって逃亡するかなども映画や小説のいい材料になるだろう。しかしごく最近では無人のドローンが発達して来たので、スナイパーの必要がいずれ無くなり、失業するだろうと思う。私たちはちょうどその変化の時期に立っているのだろう。

★ 監督

何となくフランスっぽい名前の監督だが、アメリカ人。なんとデビュー作がチョー・ユンファのリプレイスメント・キラー。見ましたよ。おもしろかったですよ。確かトレーニングデイも見たような気が。まだ見ていないが面白そうでいずれ見ようと思っているのがイコライザー・シリーズ。そしてマイケル・ジャクソンの伝記も作ったというので、いずれ見ようと思っている。

堅めの事件物を作る監督がマイケル・ジャクソンをどう扱うのかと思ったら、なんと彼は劇映画の監督になる前はミュージック・ビデオを作っていたとか。となると、ジャクソンの伝記も手堅い作りかな。期待しちゃうなあ。

監督の決断なのか予算が少なかったからなのか分からないが、多くのシーンが野外で撮られている。それは好感を生む。都会のシーンでは高級住宅街などではなく、スラムに近い、あまりきれいでない通り、田舎のシーンでは大自然が出て来る。セットのシーンとのバランスがいい。

★ 余談

エリアス・コテアスの名前を脇役でちょくちょく見かけるが、ほとんどいつも悪役かパッとしない端役。1961年生まれのカナダ人俳優。ケベック州出身なのでもしかしたらフランス語が母国語かも知れない。祖先の言語、ギリシャ語はちゃんと話せる。今年64歳だが、いかがわしい役の多い彼、実は1990年には30歳ほどで、かっこいいティーンっぽい役を演じている。ミュータント・タートルズに重要な役で出演していた。私は最初に見た彼の映画がミュータント・タートルズだったので、非常にいい印象を持っている。この作品のドイツ語吹替も絶妙で、捧腹絶倒だった。

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