September.19,2000 ああ、俺、どうしちゃったんだろう

        最近のヒット曲には、さっぱりうとい私だが、先日ラジオから流れてきた曲には「おやっ?」となった。これ『夏祭り』じゃないの。ジッタリン・ジンの10年前のヒット曲。『パンチアウト』というアルバムに入っていて、けっこうヒットしたから、私でも知っている。でも、先日耳にしたのは、私の知っている『夏祭り』とちょっと違う。録音し直したのか?なんて思ったのだが、ヴォーカルの女性が明かに違う。今ごろになって知ったのだが、これ、Whiteberryという全員がミドルティーンの女の子のバンドがカヴァーして、今ヒットしているんですってね。

        これがいいんですよ。ジッタリン・ジンのより、全体的に元気がある。この元気のよさが気持ちいい。音もオリジナルより、ずっと厚いし、けっこう上手いよ、この子達。ジッタリン・ジン版で気に入らないのが間奏部分で、「これ何とかならないの」という気が前からしていたのだ。それに較べるとWhiteberryのはカッコイイではないか! これ、けっこうプロデューサーの入れ知恵なんだろうけれど、いいよ、いいよ、凄くいいよ。ソニー・ミュージック・エンターテイメント、頑張れ! 長崎行男、頑張れ!

        まったくもう、このところの私はおかしくなってしまったのだろうか? シャノン・カーフマンに大騒ぎしたのはまだしも、リトル・ベイビーに熱をあげ、今回はWhiteberryだもんな。実のところ正直に告白してしまうと、モーニング娘って好きなんですよ。『ASAYAN』で、まだ最初のメンバーを募集オーデションしていたころから見ていて、でもこれ売れないだろうなあと思っていた。それが、つんくがプロデューサーになってから、「こりゃあ、化けるぞ」という気になってきた。それからは、ご存知の通り。この夏は『ハッピー・サマー・ウエディング』のメロディーが頭に鳴り響きっぱなしで、困った。

        そのモー娘のCDを買って聴いているのが妹にバレてしまった。「ええーっ!、モームーなんて聴いてるの? もう、いい年したオヤジが若い女の子に熱あげちっゃて、ああ嫌だ、嫌だ!」


September.10,2000 ルベーン・ゴンザレスに乾杯!

        ブエナビスタ・ソシアル・クラブが来日した。いや、正しくは今回の来日の正確なバンド名は[ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プレゼンツ イブライム・フェレール、ルベーン・ゴンザレス&オマーラ・ポルトゥオンド]という長い名前になった。というのも、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』そのままのメンバーではないからだろう。でもいいのだ。私の目的は何と言っても81歳の天才ピアニスト、ルベーン・ゴンザレスを見るのが目的なのだから。

        開演。メンバーがぞろぞろとステージに上がってくる。最後に背をかがめたルベーン・ゴンザレスがピアノの前に座る。なんだか映画のときより、やつれているように見える。大丈夫なんだろうか? そんな心配は演奏が始まると同時に吹っ飛んだ。凄い、凄い、やっぱりこの人は凄いよ。一旦演奏が始まってしまうと、猛然と弾きまくる。とても81歳とは思えぬその音楽に対するパワーはあきれかえるほど。律儀にリズムを刻んでいたかと思うと、絶妙のメロディを繰り出してくる。変幻自在の妙は、いつまで聞いていても飽きない。彼のファンである私は、彼だけのソロのコーナーを設けて欲しかったくらい。曲の中でソロが回ってくると突如フリースタイルに突入。他のメンバーにリズムをキープさせておいて、強暴に突っ走りはじめるから、聞いててワクワクしてまう。長年のコンビ、ベースのオルランド“カチャイート”ロペスとの息もよく合っている。

        3〜40分ほどで、ルベーンの出番はおしまい。おあとのピアニストと交代となってしまった。そう、バンド名というか、今回の来日は3人のミュージシャンのジョイントというスタイルになっているのだった。替わって出てきたのが女性歌手オマーラ・ポルトゥオンド。替わって出てきたピアニストがやはりルベーンほどではなく、私の興味は少し失われてきた。なにせ81歳。2時間半ほどの長丁場はやはり無理なのかなあ。どうも、この女性ヴォーカルと、この後の男性ヴォーカル、イブライム・フェレールは私には面白みに欠け、少々退屈した。

        私の興味はバック・ミュージシャンの方にどうしても行ってしまった。今回のバンドの特色はホーンが多かったこと。何と9名もいた。映画でも出ていたトランペットのマヌエル“エル・グァヒーロ”ミラバル。この人はいい。抜群に上手い。映画でのホーンは確かこの人だけだったような気がする。今回はピアノの横にトロンボーンがひとりいて、この人がコンダクターを兼ねている。その人の名はヘスス“アグアヘ”ラモス。ルベーンを庇うように、そっと隣に寄り添い、全体をまとめていた。しかもトロンボーンがまた上手い。それと、最初から出ずっぱりで吹いていた、フルートも演るサックスが上手い。  

        (訂正 すいません、あとでDVDで見たら、最後のニューヨークでのコンサートでは、けっこうホーン多かったですね)

        パーカッション隊は、映画でもそうだったが、控えめ。キューバ音楽っいうのは、伝統的に他のラテン諸国みたいにパーカッションを派手に使わないんだろうか? 特にティンバルス。ラテンの花形楽器なのだが、決してでしゃばらずに、静かに叩いている。その辺はちょっと不満。惜しいなあ、ここで見せ場を入れられるのになあと思う瞬間が多くあった。

        それと不思議なのが、今回、ペースを除くと弦楽器がひとつも入っていないこと。ギターと、映画で出てきた12弦ぐらいあってネックが短い何とかいう楽器。あれが入っていないのが寂しい。映画で、ルベーンに次ぐ存在感で圧倒したギターのコンペイ・セグンドは別バンドで11月から12月にかけて来日となるから、今回は参加しなかったのだろうが、是非弦楽器は欲しかったところ。もうひとつ残念だったのが、『チャンチャン』を演ってくれなかったこと。名曲なのになあ。これもコンペイ・セグンドの曲だから、彼に気を使って演らなかったのか?。

        いろいろ不満もあったが、私にとってルベーン・ゴンザレスを見られたことが最大の収穫。猫背でピアノを自由自在に弾きこなす彼の姿を、一生懸命脳裏に焼き付けた。ルベーン、いつまでもお元気で。

 

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