October.23,2000 ヘンだけど好きな曲

        ザ・バンドって、よく聴いたのは1枚目の『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』と2枚目の『ザ・バンド』だった。それでね、この2枚目を聴くたんびに思うのが、B面のラストって、なんてヘンな終わり方なんだろうってこと。聴き終わって、なんだか物足りなさを感じてしまって、「この虚脱感はなんなんだろう」って思っていた。

        ザ・バンドのデジタル・リマスタリング・シリーズが出て、2枚目にもボーナス・トラックが7曲もあるので、買ってしまった。そうしたら、ちょうどラジオで山下達郎が、このCDのことを喋っていて、「ラスト・ナンバーの『キング・ハーベスト』ってヘンな曲なんだよね」というので、やっぱりみんなそう思っていたのかと納得してしまった。

        なんで、あんな曲を最後に持ってきたのか、私など理解に苦しんでしまうのだが、彼らには何か理由があったのだろうか? 

        『キング・ハーベスト』は、なんだか冴えないギターの短いリフから、突然歌が入ってくる。訳詞を読んでみると、収穫の王がやってきたとか、俺は組合に入っているとか、なぜかというと彼女がそうしろというからとか、去年は納屋が全焼しちまったとか、何だか纏まりの無い、訳のわからないことを言っている。

        そして、歌に被せてギター、キーボード、ベースがなんだか、てんてんばらばらなフレーズを弾きまくっているような気がするのですが、いかがでしょう。そこに例によってレヴォン・ヘルム独特のドカドカドカドカ・ドカドカドットってなドラムが入る。あくまで個人的な印象なんですがね、これってまだ曲を練り上げている途中の段階のような気がするんですがね。なんだか、「いいや、これでいいことにしよう」って投げだしちゃったような気がするんですよ。

        そんな気になっちゃうのも、このエンディング。ギター・ソロから、突然ギター音が止み、キーボードだけ残ってフェイド・アウト。ザ・バンドってこういうこと割とやるとは思うのだけど、何か消化不良で終わっちゃってるみたいなのだよ。

        『キング・ハーベスト』は別パフォーマンスと名づけられたボーナス・トラックがあるので、こちらを聴いてみると、ありゃま、こっちの方が演奏に纏まりがあるんじゃないかと思っちゃう。ラストのギター・ソロだってキレがいいし。謎ですね。でもね、この『キング・ハーベスト』って好きなんですよ。


October.10,2000  また天才ティーンエイジ・ブルースマン登場

        アメリカというところは、驚いたもので次々と新しいブルースマンが出てくる。輸入CD屋でみかけたのが、Wes Jeansという人の『Hands On』というアルバム。ジャケットはソファーの上にかなり使いこまれたストラトキャスターが乗っているだけだから、どんな人が弾いているのかわからない。ホワイト・ブルースのコーナーにあったのだから、白人のブルースギタリストだろうと見当はついたのだが、CDをひっくり返してみて、びっくり。両脇を黒人に挟まれて写っているのは、かなり若い白人男性だ。

        ホワイト・ブルースに目が無い私は、さっそく購入して帰った。CDをプレイヤーに入れて、最初に聞えてきたのは、スティービー・レイ・ボーンに似たテキサス・スタイルのギターの音。それにつづくヴォーカルは、ほどよくハスキーでいて、しかも若々しい声。間奏に入って、唸りをあげるギター。す、すげー! 私はすっかりハマッてしまった。2曲目はシャッフルのミディアム・テンポのブルース。そして3曲目。むむっ、明かにジミ・ヘンドリックスに影響されたと思われる曲。4曲目、スロー・テンポの重いブルース。な、何者だ、こいつは!

        さっそく、CDに書いてあったレコード会社のホームページにアクセスして、Wes Jeansなる人物のプロフィールを見る。さらに、この人物のホームページもあると知り、すぐさまアクセス。な、何と18歳ですと! しかもギターを始めたのが15歳! 父が持っていたジミ・ヘンドリックスのテープを聴きながら独学で練習したらしい。たった3〜4年でこの腕前だもんなあ。世の中には、天才的な人が、いくらでもいるんですなあ。

        この人のホームページには、ミュージシャンと一緒に写した写真もたくさん載っていて、ジョニー・ラングやシャノン・カーフマンとのものもある。私の知らないうちに、ブルース界の再編成は進んでいるようだ。興味のある人は上の文章にリンクを張っておいたから、覗いてみて。レコード会社の方ではサンプルが聴けるらしい。

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