May.1,2002 話題の発売中止CDを聴く

        ラップとかヒップホップとかいうジャンルには、もともとあまり興味がなかったこともあって、日本にキングギドラという3人組のラップ・グループがいて、何年かぶりに再結成されCDが出たということは、まったく知らなかった。スポーツ新聞の芸能欄で、その新しく出したCDが発売中止で、回収作業をしているという記事を見たときも、さして興味を覚えなかった。それが、その日の午後、フラリと入ったCDショップで、まだ平積みにされて売っているのを発見したときには、悪い衝動買い癖が出てしまった。

        今回、発売禁止になったのは、同時発売になっていた『UNSTOPPABLE』と『F.F.B』の二枚のマクシ・シングル。


  


        問題になったのは『UNSTOPPABLE』の中の『ドライブバイ』と、『F.F.B』の中の『F.F.B』の2曲。私は、どんな内容であれ発売を差し止めるのには反対の立場を取っている。言論は自由のはずで、それを封じるのはいけないと思う。気に入らなければ買わなきゃいいんだ。

        まずは『ドライブバイ』を聴いてみる。いきなり聞こえてくる歌詞が「うざってえ警察 いねえか偵察」 ははあ、政治的な過激思想がいけないのかと思ったら、新聞をよく読んでみると問題はそこではなくて、サビの部分に出てくる、「ニセもん野郎にホモ野郎」 「こいつやってもいいか 奴の命奪ってもいいか」がいけないんだそうだ。うーん。小説などにはこんなセリフいくらでも出てきそうだがなあ。

        次に『F.F.B』だ。F.F.B.って何かと思ったが、聴いてみるとすぐわかった。なんと[Fast Food Bitch]なんだそうな。そんなスラングが本当にあるのかどうか知らないが、イメージはわかる。露出の多い服装に厚化粧、すぐに男と寝る安っぽい女。キングキドラはそんな女性のことを、ファースト・フードのハンバーガー・セットになぞらえて歌う。これのどこが悪いのかなあと思っていると、歌詞を歌詞カードに載せていないある単語が問題だったのだそうだ。それが「HIV」。そんな女と付き合っていると、果てはHIV感染だよって言っているらしいのだが、これがいけないんだと言う。これがHIV感染者から、槍玉に上がったんだそうだ。文脈からすると、別にHIV感染者をバカにしているとは思えないのだが・・・・・。

        ただ、この2枚のCDを聴き終えて感じるのは、やはりちょっとした不快感。ラップに興味がない私は、どうぞ御勝手にやってくださいと言うしかないのだが、『ドライブバイ』の同性愛者とか、『F.F.B』の安っぽい女みたいに、社会的にどちらかというと弱い立場にいる人を相手に罵っているという印象を持ってしまうこと。もっとなにか偽善的なものを対象にして、物事を言うくらいのことをして欲しい気がする。

        思いっきりワルぶっている感じは、決して悪いとは思わないが、『F.F.B』で、「やっぱりちゃんとした女がいい・・・・・会話の内容も知性的 品ある格好でキレイめに・・・・・イギリス女性の自立心持て」というような女性に好かれたいならば、これじゃあ、いけないんじゃないの?


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