September.23,2003 事件は野外で起こっているのだ!

9月21日 GO!GO!7188『九・二一事件』 (日比谷野外音楽堂)

        台風が接近していて、外を見ると朝から雨。この雨は1日中降り続くという予報に野音のGO!GO!7188のライヴに行く気が萎んでくる。もう決して若くない私が無理してこの雨の中を出かけて行くこともないだろうと思う。夜までボンヤリとビデオを観たりして過ごす。前夜にNHK・BSで放送されたクレイジー・ケン・バンドの渋谷公会堂でのライヴを観ると、暖かそうな屋内で楽しそうなライヴを体験している観客が映っている。どうしようか・・・。

        開演時間の午後6時が迫ってきた。よし、行くか! カッパの入った袋だけ持って家を出る。日比谷駅の地下から外へ上がる階段の踊り場でカッパに着替えようと思っていたら、同じ事を考えている人が多く、大勢の人が着替えている。ほとんど若い人ばっかり。サッとカッパを着込み、意を決して雨が降る外へと出て行く。入口でチケットを渡すそばからチケットは雨に濡れグシャグシャになる。私の席はファン・クラブに入っている友人に取ってもらったもので、あろうことか舞台上手の端、スピーカーの前。列は前から2番目という、普通、ファンならば大喜びしそうな位置なのだが、オジサンとしてはこの場所は少々恥ずかしい。

        開演時間を5分過ぎたところで、3人が出てくる。オープニングは『大人のくすり』だった。今年のアルバムを聴いた時に、私が最初に気に入った曲。メロディーがスーっと入ってきた曲だった。これでもう雨はあまり気にならなくなってしまった。ただ、私の立っている場所は、やはり音響の点で最悪。音がグシャとメリハリがなく耳に飛び込んでくる。ユウちゃんのヴォーカルも何を歌っているのかわからない時がある。それでも3人が目の前で演奏しているだけでいいやと思う。

        『黒くぬれ!』に似たイントロが響き渡る。『ポラロイド』だ。ふと気がつくとステージの前に金色のポンポンが揺れている。チアガールが出てきたらしい。ユウちゃんがヴォーカルをとりだすと、チアガールたちは左右に展開する。「あっ!」と思ったら、これはチアガールではなくて、チアオバサンなのだ。どうみても高齢者ばかり。『ポラロイド』に合わせて、スクールメイツみたいな踊りを踊っている。このひとたちはジャパンポンポンという平均年齢62歳というチームなのだそうだ。いやあ、お元気、お元気。『ポラロイド』は「♪もうこれ以上 思い出せない 昔のことなんか忘れてしまえ」と結ばれる。そうなのだ、昔のことなんか、歳のことなんか忘れて、今を生きよう、今を楽しもう。私もここで吹っ切れた。

        ステージの上は屋根があることはあるのだが、それでも雨は吹き込んでくる。後ろのドラムスのターキーのところはたいしたことはなさそうだが、ギターのユウちゃんと、ベースのアッコちゃんはけっこう濡れている。そんな中『雨のち雨のち雨』が始まる。「♪今日も雨のち雨 いつになったら止むの?」にはジーンとなってしまった。「♪ボクの右手は凍えてちぎれそうだよ」とシャウトして結ぶところは、思わず一緒に歌ってしまったじゃないか。

        GO!GO!7188というのは、私にとって不思議な存在だ。最初に目撃したのが、去年テレビで『浮船』を演奏しているのを観たとき。その音がやけに気に入りつぎつぎとCDやDVDを買っていったのだが、その楽曲が総て気に入ってしまうという一方、ターキーのドラムスのセンスに感心し、ユウちゃんとアッコちゃんというふたりの若い女性ミュージシャンの存在に興味が沸いてきたのだ。アッコちゃんがステージから、「わたしたちって、アイドル?」と観客に問いかけたように、このバンドは骨太で気持ちのいいロックを演ると同時にアイドル・バンドとしての性格を持っているのが面白い存在なのだ。

       「後半いくよー!」とアッコちゃんが叫んだところで、『浮船』やら『ロック』やら『とかげ3号』といったお馴染みのナンバーが続き、フロントのふたりが前に出て来て雨などなにするものかと弾きまくる。上手の私の目の前までユウちゃんが出てくる。自分よりもはるかに若い女の子の弾くギターにこんなにやられてしまうとは思わなかった。

       Tシャツに着替えた3人がアンコールで出てくると、『こいのうた』が始まる。少女の可愛いらしい恋心を歌ったこの曲などは、絶対に男には書けない曲だとつくづく思う。それでいてオジサンになってしまった私にも心に染み渡ってくるものがある。シーンの静まり返った客席。そして最後の曲『ジェットにんぢん』。客席が大きく揺れる。

       興奮の一夜が過ぎ、翌朝目を醒ましたら、咽喉が痛かった。風邪ひいたかな? 大人のくすり、飲まなくちゃ。


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