Jun.10,2005 どかーんと一発、国本武春のブルーグラス
6月4日 『どかーん武春劇場 in PARCO vol.2』 (PARCO劇場)
第一部は浪曲『大浦兼武〜出世の美談』。これ、以前、にぎわい座で聴いたことがある。岩倉具視が酔っ払って金屏風に落書きしたのを、若い巡査が尻拭いしたという噺。これ、美談というよりも岩倉具視の酔っ払い武勇談(笑)。
第二部がブルーグラス・バンドLast Frontierとのライヴ。国本武春は14歳のときにブルー・グラスという音楽に出会い、気に留めていたらしい。私はといえば、このジャンルに関する知識は乏しい。10年以上前に名古屋のライヴ・ハウス[ボトムライン]にフラッと入ったらBéla Fleck & The Flecktonesというバンドが出ていて、これがブルーグラスだった。もっともこのバンド、純粋なブルーグラスとはいえず、楽器はエレキを通しているいるし、構成もバンジョー、キーボード、ベース、ドラムスという普通のコンボ。音もジャズに近いものだった。これがまた私好みの音で、すっかり気に入ってCDやらビデオやらを買い込んでしまったのだが・・・・・。本来のブルー・グラスはエレキを通さずに一本のマイクの前に、かわるがわる楽器わ持った人間が立ち、ソロを取り合うものらしい。楽器はギター、バンジョー、マンドリン、ベース、バイオリン。Last Frontierの場合は、バイオリンの代わりに国本武春の三味線が入る。
国本武春のブルーグラスに関する軽いレクチャーのあと、Last Frontierが登場して、まずは『Appalachian Shamisen』からスタート。アメリカの土臭い音楽に三味線が加わるとなんとも不思議なサウンドになる。売店でこのCDを購入して、あとから何回も聴いてみたが、全14曲中、国本武春の手によるものが5曲。やはりこの5曲が私にしっくりくる。『Appalachian Shamisen』以外の曲も国本武春のものは全て日本語がタイトルに入っている。『Lonesome Yokocho』はレトロな日本の風景が浮かんでくるような曲調だ。[横町]という言葉をメンバーに説明する国本武春も苦労していたよう。『Ninja Rag』はベースのイントロから入る軽快な曲。三味線が縦横に駆け巡る。『Dream of A Geisha』の詩情豊かさはどうだろう。これなどは別に日本的なメロディーを意識しているわけでもないようなのだが、しんみりと心に沁みてくる。『Pray For Asia』は以前より『アジアの祈り』として国本武春が演っていたもの。アジアのお経の文句が日本を経由してアメリカのブルーグラスへと渡ると、これまたまか不思議なサウンドになった。他にも、国本武春が突然に『忠臣蔵・松の廊下』を演ってみせたりして大盛り上がり。ラストは『ええじゃないか』で紙の雪が大量に客席まで吹き込んできた。そんな紙吹雪の中、千社札が混じっている。会場で収集できたのは下の4種。まだたくさんあるらしい(笑)。
Jun.9,2005 Queenの名曲を客席で合唱
5月29日 『We Will Rock You』 (新宿コマ劇場)
Queenの楽曲だけでミュージカルを作ろうとしたというアイデアは抜群だ。ヴォーカルのフレディが亡くなって解散状態になっていたから、Queen観たさの観客は集るだろうと思っていたが新宿コマ劇場は満員。これを3ケ月間のロングラン公演にするというので、果たしてお客さんさんは集るのだろうかと心配にもなったが、この調子なら大丈夫だろう。広い客席を見渡すと、案外、年齢層が低いのに驚かされた。Queenに感心があるなんて私らの世代、しかも洋楽に興味がある者に限られているだろうと思っていたのだが、どうしてどうしてQueenの音楽は世代を超えて受け入れられているようだ。おそらく、去年キムタクの連続ドラマで『I Was Born to Love You』が使われて、若年層にもQueenが知られ、そこからCDのセールスにも繋がったに違いない。Queenの楽曲は、それだけ力があるということだろう。
ストーリーの面白さを期待すると失望することになると思う。なにしろ台詞すら異常に少ないミュージカルだ。Queenの曲を繋ぐためだけのストーリー作りといった印象しかない。歌詞はほとんど原曲のままなのだが、ところどころストーリーを繋ぐために変えてあるところもある。しかし、それもあくまで辻褄あわせ程度で、ほとんどいじっていないのがうれしい。このために客席のあちこちでステージに合わせて歌っている人の姿が目に付く。実は私も小さな声で歌ってしまっていたひとり(笑)。
一番気になっていたのがサウンド面。Queenといえば要であるBrian Mayのギターの音色だ。自分で作ったというあのギターの音は、他のギターでは絶対に出せないもの。それをどう克服するのだろうかと思っていたら、あら不思議、ほとんど遜色ないサウンドではないか。しかも、生バンドのギターはふたりいて、ユニゾンで音をだしていたりしているらしい。多重録音で音を作っていたBrianだから、案外、ライヴの時の音というよりもレコードの音に近かったりする。
選曲は比較的、後期の作品が多い。少ない前期作品からは『Killer Queen』とか『Seven Seas of Rhye』など。後者は最後のコーラス部分まで入れていて、思わず微笑んでしまった。それにしてもクイーンの曲を知らなくても楽しめるものになっているし、60、70年代のロックを知っているだけでもクスリと笑える個所がたくさん用意されている。いやいや、それすら知らない人でも日本人向けのクスグリの台詞も多く、笑えるに違いない。
クライマックスもほぼ予想通り。クイーンが隠した楽器の在り処がわからずに困っているところから、「ロックは楽器がなくても出来るんだ」と叫んだところで、ははあ、ここで『We Will Rock You』だなと容易に推測できるし、そこからラストは『We Are the Champion』になるなというところもズバリ。あらあら肝心の『Bohemian Rhapsody』は無しで終わっちゃうのと思ったところで、アンコールのような形で歌われるし、さらにはおそらく日本のファン向けであろう『I Was Born to Love You』までオマケにつく。これがまた出演者たちが和気藹々楽しんでいるようで気持ちがいい。
3ヵ月の興行が終わるまでにまた行きたくなる、そんな楽しい公演だ。
Jun.5,2005 松戸が燃えた
5月28日 ウシャコダ『松戸一揆』 (松戸市民劇場)
松戸は思っていたよりも近かった。午後4時から整理券を配るとネットに載っていたので、早めに家を出たのだが、3時にはJR松戸駅に到着してしまった。駅前のハンバーガー・ショップで暇を潰す。4時に会場に行って整理券を受け取り、また駅前に逆戻り。今度はドーナツ屋で暇つぶし。すっかりコーヒー腹になって5時10分前に会場へ。
ロビーには、昔のポスターなども展示されていて、お祭り気分。スタッフも、ウシャコダの同級生らしいパパさん、ママさん。いかにも手作りのライブというのがいい。開演時間が迫るに近づいて場内は埋まっていく。大半は40代後半のウシャコダの同期生と、その家族。注意事項のアナウンスも「携帯電話をお持ちの方、通話の際にはバンドの方が音を小さくいたします」と荻窪ルースター式。でも絶対にバンドが音を小さくするなんてこたあねえやね。第一、着信音もかき消されちゃうに違いない(笑)。
ライブの模様は実行委員会の手によりネット上で写真たっぷりで紹介されているから、私が書くことはあまりない。インストのあとに藤井康一が登場。『ドレミの歌・松戸版』を作ったと歌いだしたのだが、「♪ドはマツドのド レは松戸のレ ミは松戸のミ・・・・・」ってドがマツドのドにかかっているだけじゃないの! 客いじりも藤井のお得意。客席にクリクリ坊主の中学生を発見すると集中攻撃。途中『ウーシュビドゥビ』を、男性、女性に分けて合唱させたり、『カモナ・ウシャコダ』での全員ジャンプもいつものこと。懐かしのソウル・コーナーはお遊び企画。『ダンス天国』では「♪ラーララララー ララララーラララーラララー ララララー」というところを 「♪マーママママー ママママーツドマーツドマー ママツドー」とやったり、『マイガール』に入ると見せかけて『函館の女』に入るというギャグ。これわかります? 『マイガール』のイントロのリフが、♪はーるばる来たぜ と音階が同じだというわけなんですよね。来日コーナーでは、日本に来日したミュージシャンの思い出トークなど。マディ・ウォーターズの前座をやったときの裏話などを聞かせてくれた。
アンコールの『何年たっても』は、いつもの盛り上がり。「♪何年たってもお前を 忘れはしないぜ・・・・・」は、今のウシャコダそのもの。総立ちのお客さんに、「まあ座ってください。最近のコンサートって席があるのに、みんな立っているって、おかしいでしょ」と言う藤井。変わったよなあ。そこからラスト・ナンバー『Ain’t Nobody Business』に入るや、会場はシーンと静まりかえり藤井の歌声に聞き入っていた。
藤井以外のメンバーは音楽以外の職業を持っているバンドなのだが、どうしてどうしてその腕前はプロ顔負け。来年もまたホール公演をやってくれるといいな。