January.25,2003 壷川駅前弁当

        京王百貨店の『元祖有名駅弁と全国うまいもの大会』で、凄い人気となってしまった台湾の駅弁を買えなかった私は、それならと、今ここでしか買えない駅弁を買うことにした。沖縄の駅弁である。「おいおい、沖縄には鉄道は無いぞ」と声が聞えてきそうだが、沖縄本島では今、モノレールの建設中なのである。その駅のひとつ、壷川(つぼがわ)駅開通記念先行販売として、今回出品したのがこの、[海人(うみんちゅ)がつくる壷川駅前弁当]だ。

        「嶋活(しまかつ)、海ぶどう、海水入り」とある。いかにも沖縄の海の幸がいっぱいという感じが伝わってくるではないか! こちらのブースは台湾の駅弁のような混雑は無く空いていた。並ぶ必要も無く、簡単に手に入手。

        この催し物会場には、列車の中を模したコーナーがあって、ここで買った駅弁を食べられるようになっている。いつでもほとんど満席で座れないのだが、運よくたまたまひと席空いた。ようし、ここで食べて行こうではないか。

        まず目を惹くのが有頭海老二匹。これはうれしい。お弁当だとまず、一匹というのが定番。しかも、この弁当の海老は、けっこう大きい。それと、何の魚だかわからないのだが煮魚の切り身。沖縄名物の海ぶどう。漬物。

        弁当箱を三角に切ったご飯地帯には、そぼろ肉、錦糸卵、もずく、紅生姜が乗っている。なんだか、豪快だなあと思う。いかにも沖縄の弁当という感じ。

        海老二匹はやっぱり旨かった。頭をメリメリと剥がし、身を皮ごとバリバリと食べた。頭の部分はチューチューと吸う。問題は得体の知れない煮魚。旨いのだが、骨ごと煮てある。この身がちょっと剥がし難く、箸だけでは足りずに左手で押さえつけ、一生懸命にほじくらないと身が出てこない。ちょっと奮闘してしまった。海ぶどうはうれしかったなあ。一昨年、沖縄に行って初めて食べて、すっかり好物になってしまったのだ。

        そぼろ肉ご飯も、けっこうなものでございました。もずくが乗っかっているのは沖縄らしい。

        私はたいへん美味しくいただきましたが、ただ、この弁当、万人向けかというと、ちょっと疑問が残る。味付けが実に沖縄風なのだ。この沖縄の味付けに慣れない人間が食べると、拒否反応をする人もいるかもしれないということ。それこそ、海老も煮魚もそぼろ肉ももずくも、みんな同じ味付けになっている。私のような東京人には、それぞれの味にもう少し変化があった方が楽しめたのではないかと。ご飯にまで同じ味付けの汁が沁み込んでしまっているので、飽きてきてしまうのだ。それと、ご飯の量が私には多い。ご飯は少なくていいから、もう少しオカズの種類があったらなあと思ったのでありました。


January.23,2003 台湾の駅弁

        今年の京王百貨店『元祖有名駅弁と全国うまいもの大会』の特別企画は、台湾の駅弁。私も以前に台湾に行ったときに駅弁を口にしたことがあり、懐かしくなって買いに行った。ちょうど、お腹のすくお昼ごろに行けばいいだろうと京王デパートの7階、大催場について驚いた。すごい人なのである。会場は通勤列車なみの混雑。目的の駅弁売り場に辿りつくどころか、身動きひとつとれない有様だった。

        しかも、私の目指した台湾の駅弁は1日400食限定ということもあって、整理券が出ていて、すでに完売状態。認識が甘かったのだ。しかし、台湾の駅弁がこんなに人気になるとはなあ。そこで、今度は日を改めて出かけることにした。10時開店だからと、それに合わせて家を出て、会場に到着したのが10時10分。列に並ぶという行為が嫌いなので、開店10分すぎなら大丈夫だろうと判断したのだが、これも甘かった。開店10分にして、もうすでに完売ときた。

        台北に滞在していたある日のこと、私は早起きして路線バスに乗り、陽明山公園へ行った。公園で太極拳などをする人々の姿を眺め、園内をブラブラしていた。何か食事を摂りたいと思ったのだが、朝が早すぎたのか食事が出来そうなところが1軒も開いていない。次の目的地である淡水行きのバスの発車時刻が近くなったので、淡水で食事すればいいやとバス停に向うと、1軒の店の前に[便當]という文字が。これは弁当に違いない。さっそく近寄り[便當]の文字を指差すと、なにやら調理を始めた。けっこう時間がかかるので、ヤキモキしたのだが、淡水行きのバスの発車時間ギリギリで出来あがり、私はバスに飛び乗った。

        バスの中でさっそく包みを広げてみると、ご飯の上に排骨がドーンと乗っており、煮卵が添えてあるだけの弁当だった。豪快といえば豪快だが、日本の細やかな弁当とはいささか趣きが違った。しかし、味の方はさすが。排骨(パーコー)、すなわち豚ロース肉の唐揚げだが、香辛料の香りがよく、肉も柔らかでジューシーだった。煮卵がまた旨い。

        淡水の町を散策し、また路線バスに乗って、北部海岸をところどころ途中下車しながら、午後に基隆に着いた。基隆という街がまた面白いところで、台湾式の海苔巻などを食べながら、市内をブラブラ。夕方に台北へ戻る列車に乗った。外はもうすっかり暗くなっていた。

        台北へ向う途中の駅のホームで、日本の駅弁売りのような箱を首から下げている人を見かけた。呼び寄せてみるとソフトドリンクのようなものを箱に乗せて売っている。ちょっとお腹が空いていた私は、無くてもともとと思い、「ベントウ」と日本語で言ってみた。いやあ、言ってみるもんですね。[ベントウ]が通じてしまったのだ。すると、この人は箱の底蓋を外すと、中から駅弁を出すではないか! ありがたく購入。動き出した車内で開けてみると、ハムの焼いたものと目玉焼きが乗っかっている弁当だった。そのときにハッと思った。ハムは排骨の替わり、目玉焼きは煮卵の替わりではないか!?

        このときの閃きは正解だったようで、その後、別のときに台北駅の駅弁も食べたことがあるが、オカズは排骨と煮卵だった。今回の駅弁大会の写真でも、確かに排骨と煮卵が写っている。台湾の人にとって、これが定番らしいのだが、飽きるというこは無いのだろうか? 目移りするぐらい様々な駅弁に囲まれた私たちにとっては、いささか寂しい気がするのだが、これも国民性の違いなのだろうか・・・?


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