August.22,2008 食の保守性

        食に関しては保守的ではないと思っていた。海外旅行に行ったりすると、その土地のものをなんでもおいしく食べていた。よく和食が恋しくなるなんていう人がいるが、まったくそんなことはなかった。

        左足を骨折して、ここ数週間はあまり外出をしなくなったが、休日は自然と外食が多くなる。これがいい機会だと思い、以前から気になってはいたものの、まだ入っていなかった近所の飲食店を食べ歩いている。一番近くにある店はインド料理屋。本格的なインド料理を出す店で、開店して一年とは経っていない。いつか行こうと思いながら、ズルズルと今まで来てしまった。なにしろ一番近い飲食店ということもあって、足を怪我してからすぐに食事に入った。これは旨いと思った。インド料理といっても、それほど辛くなくて食べやすい。これは頻繁に通おうと思っていたのだが、三回通って飽きてしまった。何を注文しても、ようするにカレーなのである。インド人は一日三食毎日こんなものを食べているらしい。うんざりしないのだろうか?

        最近出来たスペイン料理屋にも行ってみた。ここもおいしかったが、二回行ってやや飽きてきた。結局のところ日本人はやはり日本の味が合っているのでしょうか。各国の専門的料理というのは、一度は食べるとおいしいとは思うけれど年中食べたいとは思わない。こういうのはやっぱり、たま〜に食べるからおいしいと思うんじゃないだろうか。中華料理はそんな中でも好きだ。ここ数年、近所に中国人経営の小さな中華料理屋がたくさん出来た。こういう店、案外開店直後の方が面白い。変わったメニューがあったり、味付けがいかにも中国人向けだったりして、ちょっとした食のカルチャー・ショックを受けたりする。それが日にちが経つにつれ経営者の考えが変わってくる。味付けを日本人向けに直してしまう。メニューも面白そうなものが姿を消し、やれホイコーローだ、チンジャオロースーだ、酢豚だ、ニラレバ炒めだと、ありきたりなものばかりが幅を利かすようになる。これはもう日本料理でしょ。

        カレーライスだって、もう立派な日本料理といっていいのではないか。インド人はあれをインド料理と認めないだろうしさ。ようするに、各国の人は自国の味というのを持っていて、やっぱりそれが一番落ち着くのでしょうね。アメリカ人は朝食というとトースト、スクランブルドエッグ、ベーコン、コーヒーということに落ち着くらしいけれど、こんなの毎朝食べるのは嫌だと思うのはやっぱり私が日本人なのだからであって、朝食はやっぱり御飯に味噌汁、納豆でしょと思っていると、余所の国の人は、そんなのなんで毎朝食べられるの? っていうことになるわけで。

        それで結局落ち着くのは、さんまの塩焼き定食あたりだったりするんですね。外国旅行に行くのに醤油を持ち歩いたり、梅干や佃煮を持っていくなんて人を笑っていたわけでありますが、今では案外自分もそんな人を笑えなくなってきてしまったのではないか。食に関して、保守的になっていく自分を、「やっぱり歳なのかなあ」と自嘲してみたりする今日このごろ。


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