July.11,2001 ぶっ飛んでいる筧利夫の映画
目に不安があって、どうも映画館に行く気にはなれない。別に映画館に行ってはいけないと止められているわけではないのだが、最初に目の異常を感じたのが映画館を出たときだったので、ちょっと映画館に行くのに臆病になっているのだ。かといって、映画はみたい。仕方なくこのところは、ビデオばかり見ている。それも1本通して見るのではなく、休み休み見ているといった状態。
そんな中、先週の深夜にテレビ東京で放映された『はいすくーる仁義』には、すっかりハマってしまった。確かこれは映画館にかけられることなく、いきなりビデオだった記憶がある。当時、生嶋が面白がって話してくれたのも、なんとなく憶えている。
広島のヤクザの組長(三木のり平)は青春学園ドラマかぶれ(何という設定だ!)。きょうもきょうとて青春ドラマを見て涙している。「おい! ウチの子分に教員免許を持っているものは、おらんのかあ!」と一喝。「はあ、ジョージなら持っておりますが・・・」 「ジョージはどうした。最近顔を見んが・・・」 「はあ、ジョージは独房ですが・・・」 「何? 独房?」 「ええ、組長が独房に入れたんじゃないですか」 「えっ、ワシが?」 「ほら、組長の大事にしていた錦鯉を食べちゃったとかで・・・」。次のシーンで独房でスクワットをやっているサングラス男が写る。これが主人公のジョージ。演じるは、筧利夫だあ!
「ジョージ、お前はこれから、東京の高校の教師になるんじゃあ!」 「えっ、どうして?」 「日本の教育会に革命をもたらすんじゃあ」。こうして教員免許を持ったヤクザが社会科の教師として、不良高校に赴任することになる。さっそく、ワルどもとの戦いが始まる。
そんなジョージの弱みは、白鳥麗子先生(白島靖代)。「暴力はいけません」という彼女に、「私は暴力を肯定するわけではありません。ただひとつあるとしたら、それは愛のある暴力です」。
いよいよ番長が襲いかかってくる。手には長ドス。ヒュンヒュンと振り回される刀に追い詰められて絶対絶命。と、背広の裏ポケットから拳銃を抜き出すジョージ。「どこの世界にチャカ持った教師がおるというんじゃあ!」 「ここにおるんじゃあ!」。長ドス持ってる高校生もどこにいるんだという感じですがね。さすがに拳銃にはかなわない。刀を捨てたところで、番長をボコボコに殴りつける。そこへ白鳥先生。「暴力はいけません。愛の力ですよ」 「お前に浴びせた拳のひとつひとつが、魂のキャッチボールだぜ」
番長、次の策を考えるが、それがフリーのヤクザを雇うということ。「そんな人いますかね?」 「さあ・・・。でも新聞広告をうってみよう」 「そんな広告、載せてくれる新聞あります?」 「載せてくれるさ、東スポならね」。さあ、そこで集まったフリーのヤクザたち。そして、ジョージには恨みがあるというジャッカルなる元傭兵(ジョージの同級生で、ジョージに女子更衣室に閉じ込められて痴漢と間違われ、それがもとで教員になるのをあきらめたという過去がある)が登場し、話はもっともっと面白くなるのだが、スジを追うのはここまでにしておこう。
原作は、水穂しゅうしのマンガなのだが、私はこれは読んでいない。しかし、この映画は、ほとんどマンガ以下(誤解のないように。最大の褒め言葉です)の面白さ! 筧が、つかこうへいの芝居あたりで見せる、思い入れたっぷりした演技、あれをもっとデフォルメした感じで演じている。おそらく、監督の小松隆志もそのへんを意識しているに違いない。だって、最後の決闘で、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を流すなんて、もう、もろ、つかこうへい趣味だもの。今週は同じ時間帯で『はいすくーる仁義2』が放映される。エア・チェックが楽しみだ。