October.31,2001 やっぱりお子様向けか・・・『スパイキッズ』

        東京国際ファンタステッィク映画祭が開幕した。よおし、よおし、今年も気合入れて見に行くぞう―――と思ったものの、いろいろと野暮用が入ってしまって、それほど時間が取れない。しかもだ、今年はどうしたことか食指が動くような作品がほとんど無い。ブツブツ文句を言っても仕方がない。とりあえずはオープニング・セレモニーと一緒に上映される『スパイ・キッズ』に行ってみることにした。

        開幕と同時に、驚きの事実が知らされた。この映画祭の顔である小松沢陽一プロデューサー。通称泣きの小松沢が病気のために欠席とのニュースが伝えられた。小松沢さんどうしたのかなあ? あのなにかというと感激して泣き出してしまう小松沢節が聞けないのは残念。オープニングとあって楽屋から客席からゲストがつぎつぎと舞台に上がって挨拶。それが後ろのスクリーンに映し出された。下の写真は『女優霊』 『リング』で私たちを震え上がらせた中田秀夫監督。来年公開の、これまた鈴木光司原作の『仄暗い海の底から』をPR。これ最近、予告編を見たけれど、すっごく怖そう。ううー、見たい! でも見たくない! でも見たい!



        長いセレモニーのあと、入場時に配られたクラッカーを客席も含めて全員で鳴らし、さあ開幕だ。『スパイキッズ』の上映前には、四人組のキャンペーン・ガール、その名も[スパイキッズ]による歌と踊り『スパイキッズ』。キャンペーン用に作った日本語の曲なのだが、CDが発売になるらしい。なんだかなあ、こんなのヒットするのかなあ。曲調とは合わないようなスローな踊りを見せられる。ふー。



        45分後、ようやく上映が始まるかと思ったらねロバート・ロドリゲスのメッセージ映像が流される。「今、『スパイキッズ2』の撮影中で日本には行けないが、是非2作目も楽しみにしてくれ」とのこと。

        こうして『スパイキッズ』の上映が始まったのだが、これが何といいましょうか。恐れていたことが現実になってしまったというか・・・。基本的にやっぱり子供向けの映画。アントニオ・バンデラスも今回はあまり活躍の場面少なし。そうなんですよ。家族でスパイをやっているという設定(最初は両親は子供達に秘密にしているのだが)自体がヘンだし無理があるのだが、中心はやはりこの小学生の姉弟を活躍させようということにあって、子供とあってやはり殺人兵器を使わせるわけにはいかない。スパイ映画にお馴染みの秘密兵器もたくさん出てくるのだが、これも殺傷力はゼロ。コメディとして見ている分には退屈しないのだが、なんたろね、これ。

        『エル・マリアッチ』 『デスペラード』 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』と、度肝を抜かせてくれたロドリゲス。二年前の『パラサイト』のときに[?]と思ったのだが、ひょっとして私は見方を間違っていたのかもしれない。案外この人の本音は、荒削りの豪快なアクションではなく、ラテン乗りのコメディ部分にあったのかもしれない。


October.8,2001 炎を上げ、芝生を巻き上げて飛ぶボール

        『喜劇之王』から二年。ようやくチャウ・シンチーの新作がこの夏香港で公開され大ヒットした。その名を『少林足球』。秋葉原でビデオCDを見つけたときには、胸が高鳴った。ようやくチャウ・シンチーが見られる! この日をどんなに心待ちにしていたものか! たまたまDVDが品切れで、ビデオCDしかない。DVDを見つけるまで待つか・・・いや、そんなに待てるものか! ビデオCDでも十分ではないか! 即購入の意思を持ってレジへ。

        [黄金の右足]といわれたサッカーの名プレイヤー、ン・マンタは大事なところでペナルィ・キックをはずしてしまい、怒ったフーリガンからその右足を折られてしまう。それから月日は流れ、ン・マンタは掃除夫として働いている日々。そんなある日、路上でカンフーの達人チャウ・シンチーと出会う。もっともシンチーもゴミを集めて回収業者に売っているという落ちぶれた身の上。カンフーを教えると言われて名刺を渡されるが、もちろん信用できない。飲んでいた缶ビールに貰った名刺を突っ込み投げ捨てるが、その空き缶を蹴飛ばしたシンチー。空缶はヒューンと空を飛んで、どこかへ見えなくなってしまう。

        ある日、外を歩いていたン・マンタは、壁に空缶が突き刺さっているのを見つける。何とその中にはシンチーの名刺。あのとき、シンチーが蹴飛ばした空缶だ。空缶を壁から引き抜いてみると、壁がガラガラと崩壊! その向こうには、ならず者たちにからまれたシンチーの姿。カンフーを使う気はないと、相手のひとりが持っていたサッカー・ボールを蹴って、全員を倒してしまう。それを見ていたン・マンタ、カンフーをサッカーに応用できないかと思いつく。

        カンフーをサッカーに。このアイデアは、監督主演のチャウ・シンチーの勝利だろう。シンチーは六人兄弟の五男という設定。かくて、カンフーサッカー・チームを作るべく、シンチーは兄弟に声をかけていく。この兄弟、揃いも揃って、カンフーにしか才能がなく、親から教えられたカンフーだけでは今の時代を生きていけないらしい。キャバレーのボーイ、皿洗い、アクセク働かされている証券マン、失業者、スーパーの落ちこぼれ店員。実にしょぼくれた人生を送っている。しかし、みんな、何かしらのカンフーの必殺技を持っているという設定だ。ある者は石頭、ある者は身が軽く空を飛んでしまう。またある者は鉄壁のような守りを持っている。

        最初はサッカーなんてとバカにしていた兄弟も、やがて結集。サッカーの特訓が始まる。まとまりがついてきたところで、ン・マンタの用意した練習試合。相手チームとサッカー場で試合前の挨拶をすると、相手チームのリーダーの服からモンキー・レンチが地面にボトリ。「いやあ、ボクは自動車修理工ですから・・・」 レンチを拾い上げると、今度はハンマーがボトリ。「だからあ、ボクは自動車修理工なんだってば・・・」 試合が始まるとサッカーなんてそっちのけ、手に隠し持っていた武器まで使ってシンチー兄弟をボッコボコ。ン・マンタに「あいつら、単なるならず者じゃないか!」と助けを求めるシンチーに、「これはテストなんだ」としか言わないン・マンタ。そうだ、これこそカンフー・サッカーだと目覚めたシンチー兄弟、カンフーを応用してサッカーの試合に勝利する。

        ここまでが、だいたい映画の半分までぐらい。さて、このあとサッカー大会に進出。ン・マンタの宿敵、ドーピング・サッカーチームと闘うことになるのだが、このドーピング軍団、只者の強さではない。ほとんどサイボーグ。かくて、サッカー・ボールは炎を上げて空を飛び、あるいは芝生を巻き上げて低空を飛ぶ。そのボールに当たった人間は大怪我だ。人間は空を飛び、回転し、カンフーの技でポールを蹴る。

        ジャオ・ウエイとのロマンスもあり、見る者をまったく飽きさせない作りは見事。ただ、せっかくのジャオ・ウエイ、最初の登場シーンがブスメイク、次が厚化粧メイク、最後が・・・あれじゃあ、女優さん可哀相だよなあ。

        ワイヤーワークとCGがふんだんに使われていて、そのCGがなんとも香港喜劇らしくチープなのが面白い。『マトリックス』のパロディのような使い方もあって大笑いしてしまった。ほとんど日本のマンガに近いのだが、これをよく映画にしたものだ。シンチー、やはり待っただけのことはある。


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