November.20,2002 公開が遅れた理由って、ひょっとして・・・
日本では外国映画が公開されるのが遅い。最近は日米同時公開なんていうのも増えてきたが、宣伝などの準備期間を必要とする為なのか、余所の国よりもアメリカ映画の公開時期は遅くなるのが常。それでもアメリカ映画はまだいい方で、それ以外の国の映画はさらに遅くなる。香港映画など、あのジャッキー・チェン主演作品でさえ一年くらい待たされたりする。ジャッキー・チェン以外だと、もう忘れたころに突然に映画館にかかったり、悪くするといきなりビデオ・リリース。それも、もう少し作品を選べないものかという映画が公開されたりする。もう少しましな映画がいくらでもあるだろうに。
このところ、輸入DVDで香港映画の新作を追っかけているのもそんな理由もあるからで、今年になって見たものは、ほとんどアタリだった。
『パープル・ストーム』(紫雨風暴)という香港映画が突然に公開された。単館上映、公開2日目の最終回に行ってみたら、寒々しいくらいガラガラだった。もう3年前の映画。「香港電影金像奨5部門、台湾金馬奨4部門受賞」の宣伝文句につられて行ったのだが、この年香港金像奨は、ほとんど『千言萬語』のひとり勝ち。作品賞、監督賞、主演女優賞他、主だった賞はみんな取られてしまって、『パープル・ストーム』が取った賞というのは、撮影賞、アクション賞、編集賞、衣装&メイク賞、音響効果賞という技術的なものばかり。宣伝文句にウソはないのだけれども、なんだか拍子抜けした気分。
監督はこのあと、ジャッキー・チェンと組んで『アクシデンタル・スパイ』を撮ったテディ・チャン。主演のトッドにはダニエル・ウー。テロリストの一団が香港に潜入する。水際で食い止めようとする香港の対テロ組織は激しい銃撃戦の末にテロリストのひとりトッドを捕獲する。ところがトッドは銃撃戦で頭を負傷して、記憶を喪失してしまっている。そこで対テロ組織はトッドに、実はお前は香港側がテロ組織に送りこんだダブルスパイだということにして、テロ組織に送り返す。かすかに甦る記憶は自分はダブルスパイではなくテロリストなのではないかということ。どちらなのだかわからなくなり葛藤するという話。
このダニエル・ウーに演技力が乏しいのが、ちょっと難。それにどうも華がない。それに較べるとテロ組織のボス(カム・コクリョン)がいい。とても憎々しげで、非情で、頭が切れるという役どころを見事に演じている。助演男優賞をあげてもいいくらいだ。
アクション賞を取っただけあって、アクション・シーンはよく出来ている。対テロ組織が仕掛けた罠に嵌まってしまうテロ部隊。数人しかいないテロ部隊を包囲した対テロ側。すさまじい銃撃戦になるがテロ側がほとんど被害なしというのも都合がよすぎる気がしたのだが、このあとのクライマックスの戦いがこれまた迫力あったから、まあ見ている方としては、これでいいか。
自分がどちらの側の人間なのか迷うというアイデアは面白いのだけど、ジョニー・トーあたりが監督で、主演がラウ・チン・ワンあたりだったらもっと面白くなったろうになあと思うのだが・・・。やっばりこのところすっかり私はジョニー・トーかぶれになってしまったのだろうか?
どうして日本公開が遅れたんだろうと思いながら見ていたら、高層ビルの爆破テロのシーンが出て来る。ひょっとして去年の貿易センター・ビルのテロが原因なのかもしれないという気がしてきたが、考えすぎかな?
November.8,2002 日本人として素直に楽しめるだろうか?
噂の韓国映画『2009ロストメモリーズ』をDVDで見た。これはベルリンさんもベルリン・ファンタで見ていて、書いているから詳しくはそちらを参照してもらいたいのだが、ほとんど全篇が日本語だったのにはびっくりさせられた。伊藤博文暗殺が失敗して歴史が変ってしまい、2009年現在韓国はまだ日本の植民地になっていて、使われている言語も日本語というわけ。はたして伊藤博文暗殺失敗だけで、そんなに歴史が変ってしまっただろうかという疑問はあるとしても・・・。
一応字幕もあって、日本語というのもあったから、それをチョイスして見ていたのだが、活字が無いのかところどころ、□□□と虫食いだらけ。その上、喋っているのと違うセリフが書かれていたりで、わずらわしいったらない。重要な登場人物は西郷(仲村トオル)と坂本(チャン・ドンゴン)の特別捜査隊のふたり。どうも不穏な動きをする反乱分子の捜査に関わるふたりなのだが、朝鮮独立を目指すその人たちを[不令鮮人]と呼んでいるのが面白い、というか不思議な言葉だと思った。
確かによく出来ているSFアクション映画だとは思うのだけど、どーも例によって私は韓国映画に相性が悪い。なんといっても生真面目すぎるんだよね。それにテーマがテーマだけに素直に楽しめないのだ。日本人の西郷と韓国人の坂本との葛藤などは上手く描かれているものの、基本的にはやっぱり日本は悪だとしか描かれない。まあ、その方が映画は作りやすいのかもしれないが、日本人としてはイヤーな気持ちになってくる。相変わらずの韓国の根強い[日本は悪]教育が続いている限り、両国の溝は埋まらない気がしてきて、素直に楽しめない気分になってしまうのだ。