December.6,2003 商売人バリー・ウォンの便乗作?
どうやら『インファナル・アフェア』(無間道 Infernal Affairs)は日本でもヒットしたようで、結構な展開になってきました。さて、こうなると香港映画界がこんな鉱脈を放っておくわけないなあと思っていたら、『インファナル・アフェア』は続編を2本制作するは、便乗作は出るわで、たいへんなことになっているよう。便乗といわれておかしくないだろうと思われるのが、今年の初夏に香港で封切られた『黒白森林』(Colour Of Truth)。『インファナル・アフェア』の香港での公開は昨年末だから、半年後に公開された作品。
制作、共同監督がバリー・ウォンだもん。、さもありなん。『インファナル・アフェア』で警察の上司役をやったアンソニー・ウォンが、そのまま刑事役。
ラウ・チンワンは黒社会との癒着関係も持っている刑事だが、ごく普通の子煩悩な人柄でもある。レストランで家族一緒に食事をしたあと、仕事があるからと家族と別れて、近くのビルに出かける。そこには黒社会のン・ジャンユー(フランシス・ンね)がいる。どうやら手入れが行われるらしく、ラウ・チンワンに、自分はもう二度とムショに入れられるのはいやだと告げる。それでは逃がしてやるから、オレについて来いとラウ・チンワンはン・ジャンユーを連れて屋根越しに逃げる。と、そこに忽然と現れるアンソニー・ウォン。「オレを騙したのか」と思うン・ジャンユー。「違う、誤解だ」とジャンユーを説得するチンワン。「拳銃を渡せ」と叫ぶアンソニー・ウォン。そこで、銃声が三発鳴り響く。次のシーンでは、ラウ・チンワンとン・ジャンユーが死んでおり、拳銃を握り締めて立ちすくんでいるアンソニー・ウォンの姿が。ここまでのほんの数分のオープニングで、ラウ・チンワンとン・ジャンユーという個性的な俳優の出番は終了。もったいない使い方だが、いい出だしだ。
さて、話はいきなり十年くらい進む。このへんが『インファナル・アフェア』っぽいでしょ。ラウ・チンワンの息子レイモンド・ウォンは父と同じ道を選び、刑事になる。運命とは面白いもので(そうしないと映画にならない)、この息子は父のかつての同僚であり、仇でもあるアンソニー・ウォンの下に配属になる。ここでこのチームが任された任務というのが黒社会のボス、パトリック・ツェー(『少林サッカー』の相手チームのオーナー役ね)の身辺警護。レイモンド・ウォンはこの黒社会のボスの娘の護衛の任務につく。この娘役はなんとTWINSのジリアン・チョン。ジリアン・チョンは当初はレイモンド・ウォンのことを嫌っているが、暗殺者から命を守ってもらった事件があってから、心を開くようになる(ように見えるのだが・・・)。このときに一緒に暗殺者と戦うのがチャップマン・トー。『インファナル・アフェア』でダメなチンピラ役をやった人で、今回は刑事役なのだが、こちらもダメで使えない刑事。もうほとんどおんなじ使われ方をしている。可哀想だなあ。
この黒社会のボスの警備の任務に就いたときに、レイモンド・ウォンの前に現れた男がいる。ン・ジャンユーの息子であり、父と同じ黒社会でのし上がってきたジョーダン・チャン(日本では陳小春の方が通りがいい)。小春は、アンソニー・ウォンはふたりに共通した仇だと言い、暗殺者と戦うときのどさくさに紛れてアンソニー・ウォンを殺せと言い出す。心の中で迷うレイモンド・ウォン。確かに自分の父を殺した憎い相手なのだが、上司であるアンソニー・ウォンと接していると、相手が悪い男だとは思えなくなってくる。使えないダメ刑事のチャップマン・トーをそうと知りながら、ある理由から使い続けているし、家では植物人間状態の男の面倒をみている。
ラストで、あっという展開になり、それはそれで面白い。ただ、問題は冒頭の三発の銃弾の詳細なのだが、もっと面白い説明が付くのかと思っていたら、最後まで引張ってきて、案外普通の説明だったこと。ともあれ、さすがにバリー・ウォン、商売人だ。最後まで飽きさせずに観客を引きつける腕はたいしたもの。
さあて、そろそろ『インファナル・アフェア』の続編が、日本の輸入DVDショップにも並ぶ時期。楽しみだけれど、ちょっと不安でもある。はたして一作目を超えられるだろうか? 蛇足みたいな映画でなければいいのだが・・・。