April.22,2004 仏教思想と筋肉ムキムキ男
ジョニー・トー、ワイ・カーファイ共同監督、アンディ・ラウ主演、しかも特殊メイクといったら、アンディ・ラウがデブメイクに挑戦した『痩身男女』を思い出すが、こちらもあのときのトリオで特殊メイク。しかし今回の『Running on Karma』、デブとは正反対のマッチョメイクである。
この写真を見たときに思ったのは、これは香港版の『ハルク』を作ろうとしたのかな、ということ。ところが内容は私の想像していたものとは、かなり掛け離れたものだった。
香港の男性ストリップ・バー。ビッグ(アンディー・ラウ)他数人のダンサーがカウンターで踊っている。お客さんは全員若い女性たち。ダンサーのブリーフに盛んにお札を挟んでいる。「脱いでー!」の声にビッグがブリーフを下げた瞬間、警察の手入れが入る。なんと、さっきまで騒いでいた女性客のひとりもリー・ファン・イエ(セシリア・チャン)という女性警察官。猥褻罪でビッグは逮捕されそうになるが、隙を見てビッグは、素っ裸のまま、香港の夜の街に逃げ出す。このアンディ・ラウのマッチョ・メイクがいかにも作り物めいたもので笑える。
一方、インド人が惨殺されるという事件が起こる。警察が現場にかけつけてみると、油缶のようなものの中に隠れていた怪人が現れる。警察はこの男を逮捕して車に乗せ、警察署に移送しようとする。護送の途中にこの怪人は車から脱走。夜の香港の街に逃げていく。それを追う大勢の警察官。
リー・ファン・イエに追っかけられたビッグと、怪人が街角ですれ違う。怪人は逃げおおせてしまうが、ビッグは警察官らに取り囲まれ逮捕されてしまう。
単なる猥褻罪だとわかるとビッグは釈放される。一方、リー・ファン・イエは人手不足から、インド人殺害事件の捜査の方に就かされる。現場検証をしたあとに、カメラを忘れたことに気づき現場に戻ってみると、そこにはビッグがいる。ビッグは誰かが死んだときには、その原因が見えるという特殊な能力を持っていると言う。リー・ファン・イエにここで何が起こったか再現してみせ、捜査に協力することを約束する。こうして、逃げた怪人を追うというストーリーの展開だと、普通のサスペンス映画といえるのだが、この映画、一筋縄ではいかないのだ。
ピッグは実は、中国本土の寺の僧侶であり、カンフーの使い手でもある。さらには、人が背負ったカルマを見える能力を持っているのだ。ここから話がおかしな方向へと向かっていく。ビッグにはリー・ファン・イエの背後に戦争中に日本人が中国人を虐殺している姿が見える。どうも彼女の前世は、この日本人に関係しているらしい。この運命を背負っている限り、彼女は殺される運命にあるというのである。果たして彼女を救う道はあるのか・・・。
英語字幕でこの妙な映画を追っていると、なんだかヘンテコリンという印象しか持てないのだが、なんと香港のアカデミー賞に当たる、第23回香港電影金像賞で、作品賞、脚本賞、主演男優賞を取ってしまったというのだからびっくり。いずれ日本語字幕付きで公開されたら、もう一度見直してみたい気もするが、なんでこの映画が・・・? という思いもある。
ともあれ、私が贔屓しているジョニー・トー&ワイ・カーファイ監督コンビの作品が評価されたのだもの、人事ながらうれしい。