January.24,2007 数が見えてこないもどかしさ

        つくづく『父親たちの星条旗』をまだ観てなかったことが悔やまれた。『硫黄島からの手紙』である。硫黄島の闘いを日米それぞれの目から描くなんて発想をしたクリント・イーストウッドはやはり偉い。これは、そうそうできることではないだろう。私は勝手にクリント・イーストウッドはタカ派なのだと勘違いしていたフシがある。元来、映画というものは作者の一方的な視線から語られるものが多い。それがイーストウッドという人の映画の撮り方は常に冷静で、どこか冷めたところがある。それが今回は戦争というこで、両者の視線に立って描こうというわけだ。まさに恐れ入った。

        投降した日本兵を射殺してしまうシーンなんて、昔のアメリカ映画だったら決してありえなかったに違いない。それにしてもだ。なにかもどかしさを感じてしまう。圧倒的な戦力の差は、この映画を観ればわかるものの淡々と描きすぎてしまっていて、時間の経過がわからない。どのくらいの期間戦っていたのかがわからないのだ。この映画を観ているだけだと、アメリカ軍の圧倒的な物量作戦で、日本軍はひとたまりもなくやられてしまったような印象を受ける。日本軍がアメリカ兵を殺すシーンはほとんどなく、日本兵のみが殺され続け、そして玉砕、自決といったシーンばかりが目立ってしまっている。時間経過は、ほんの数日という感じ。

        それが、あとからパンフレットを買って、にわかに硫黄島の闘いを勉強しなおしてみると、なんと、硫黄島の闘いというのは、アメリカ軍が当初考えていた5日間で終わると予想が覆り、36日間にも渡り死闘が繰り広がれ、アメリカ側にも多数の死者が出たという。日本兵二万人、アメリカ兵にいたっては二万人以上の死者。それがこの映画だけだとほとんど見えてこない。まあ、予算の関係もあるんだろうが、アメリカ兵の数はそれなりに予想できるが、日本兵の数がかなり少なく見えてしまう。やっぱり『父親たちの星条旗』を観ておくべきだったんだろうか。


January.3,2007 やばいぜ、今度のボンドは!

        仕事柄、大晦日はいつもどおり午前4時に起床したあと、午後11時までまったく休みなく働くことになる。実労19時間働き続けなのだ。もう目はトロ〜ンとしていて思考力はゼロ。そのまま布団に倒れこんで寝てしまう。

        一夜明けてノソノソと起きだすと、昨夜片付けられなかった分の片付け。そしてコタツに入ってダラダラと過ごすのが例年なのだが、今年は一念発起。正月からそういう態度だからいけないのだと気がつき、今年は映画館に行く事にした。サロンパス ルーブル丸の内・・・・・いつのまにか、丸の内ルーブルはそんな名称に変わっていた。久光製薬がスポンサーになったのね。

        毎月1日は映画の日だから、入場料1000円で映画が観られるのだ。初回10時15分スクリーン前の幕が上がっていく。なんだか映画館に来たのは久しぶりだ。そういえば以前映画の日に何本もハシゴをしたこともあったっけ。きょうの上映作品は『007/カジノロワイヤル』。スパイ映画ブームだった中学生のときに原作を読んだ記憶があるのだが、ストーリーはもうすっかり忘れてしまった。詳しい内容はベルリンさんが一足早く書いているので、そちらを参考にして欲しい。まず私の感想は、これ本当にイアン・フレミングなの? という事。これってジェフリー・ディーヴァーじゃんと思えてしまうのだ。2時間24分の上映時間をかなり残して、物語は一応の解決をみてしまうのだ。後の時間、どうなるの? と思ったところで、出ました出ました、カメレオンが登場。これが実に意外なカメレオン。こう来たかと思っているのもつかの間、作者は第二のカメレオンまで用意している。はたして原作もこうだったかわからないのだが、これは上手い。

        六代目ボンドはダニエル・クレイグ。歴代の中では一番野生的な印象を受ける。クールさはあまりなく、喜怒哀楽を平気で表情に出す。体力はかなりあるのだが、冒頭の工事現場の追いかけ劇を観ていても、逃げる相手の方がすばしこく、アクションも上。それを追跡するボンドは近道、動力、そして頭を働かせて追い詰める。そのアクションは華麗というよりは、無骨で、ある意味ドン臭い。いままでのボンドのようなスマートさはほとんど見えない。だが、どうだろう。今まででこんなに人間臭いボンドがいただろうか?

        カジノのポーカーのシーン。ここでもボンドはクールなギャンブラーではない。大負けをすると、パートナーのヴェスパー(エヴァ・グリーン)に金を出せと言い、断られるとキレる。キレて敵役のル・シッフル(マッツ・ミケルセン)をナイフで殺そうとする。こんなボンドがいただろうか。ちなみにその場を収めるのが、お馴染みCIAのフェリックス・レイターなのだが、これがジェフリー・ライト。ええーっ! フェリックス・レイターが黒人だったなんて!

        これでもかこれでもかと続くアクションシーンで観る者を飽きさせないでいて、それでいて結末は胸にくる憎い構成。ダンディとはいいがたいダニエル・クレイグへの評価は割れるところだろうけれど、このちょっと悪人面したボンドは癖になりそう。ちょい悪オヤジではなく、かなりやばいボンドの誕生だ。


このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る