February.3,2008 無限道序章
日本版の香港DVDの棚を見ていたら、『エンドレス・アフェア』なる作品を見つけた。おおっ、フランシス・ン(ン・ジャンユー)主演じゃん! なんだこれ? とよく見ると、『愛興誠』(愛与誠)ではないか。アラン・マックの初監督作品。香港での英語タイトルは、A War Named Desire なのだが、どうやらアンドリュー・ラウと共同監督した『インファナル・アフェア』にひっかけて、こんな日本語タイトルになったらしい。紛らわしいといえば紛らわしいけれど、『愛と誠』では日本では誤解されそうなタイトルだし、英語タイトルも日本語タイトルになりにくい。まっ、それでこんなタイトルに落ち着いたんでしょう。
冒頭、ウインドウの割れたクルマを運転しているフランシス・ン。助手席で血まみれになっているダニエル・チャンの姿が映し出される。後部座席には拳銃と無数の薬莢。さて、ふたりに何があったのかが、このあとから語られるという、とても気を持たせるオープニングだ。
ダニエル・チャンは恋人のペース・ウー(台湾の女性という設定)を残し、タイへ旅立とうとしている。危険だから絶対に来ては駄目だと言うのも聞かずに一緒についてきてしまう。このふたりがどんな職業や立場なのかはわからないが、現代的な気楽な若者といった風情だ。ペース・ウーはすっかり観光気分。空港から長距離バスに乗って、未舗装の道路を進んだ先はカンボジア国境近くの小さな街。ダニエル・チャンの目的は、15年前に人を殺して香港にいられなくなり、母の金を持ち出してタイへ高飛びした兄に会い、返金を求めるというもの。
その兄というのがフランシス・ン。ここタイのカジノを経営している黒社会の幹部となっている。兄は現在、対立する組織との抗争が始まっている。兄は金を渡し、さっさとタイから出ろと弟に言うが、子分のサム・リーの裏切りにあい、ダニエル・チャンは敵対する組織のボス暗殺の犯人に仕立てられてしまう。ペース・ウーも敵に捕えられ、黒社会の抗争に否応もなく巻き込まれてしまう。
ダニエル・チャンが普通の若者だというのに拳銃を持って黒社会の人間と戦うという設定が、この人の実力からすると無理がある気がするし、ペース・ウーは華やかしか? という感じなのだが、フランシス・ンの仲間が強力。片腕といっていいデイヴ・ウォンがかっこいい。こいつあいい味方。そしてそれ以上にかっこいいのが、ジジ・リョンだ。フランシス・ンのもうひとりの片腕。フランシス・ンと一緒に踊りを踊りながら拳銃の乱射シーンの華麗さもさることながら、水かけ祭りの中を進む1本の傘。水かけ祭りに興じる相手の幹部に傘からスッと差し込まれるナイフ。チャイナ・ドレスのジジにうっとり間違いなし!
アラン・マックにしては、まだ脚本が練られていないような気がするのだが、ああ、いかにもこれは『インファナル・アフェア』に至る、裏切りの物語なんだなと納得。ラストは、「おいおいこれでいいのかよ」と突っ込みを入れたくなるが、まあいいことにしましょ(笑)。あっ、日本タイトルの意味はこれだったのか! なるほど、それはそれで辛いことで。