June.17,2008 悪くはないんだけどね

        三谷幸喜の映画監督第4作目『ザ・マジックアワー』を初日に観に行った。混むだろうなあと予想したので、東宝のシネコンTOHOシネマズのインターネット予約[vit]を『フランス映画祭』で憶えたので、これを使って当日に予約。そのときに、日本語字幕版とあったのにちょっとびっくり。これは洋画のときに日本語字幕版と吹替え版があるので、邦画でも日本語なのにこういう表示が出てしまうのかと思ったら、本当に日本語で喋ってスクリーンの下に日本語字幕も出るのだ。しかも台詞だけではなく、[ブレーキの音]なんてのも字幕で出るから面白い。まあ聞き取りにくい台詞を喋っている役者さんはひとりもいなかったから、これは必要なかったけれど、ときどき音響の悪い映画館や、発声が悪い役者さんが出ている映画にはこういうの、助かるなあ。

        まあ三谷幸喜作品だから、つまらなくはない。いや、面白かったと言っておきましょう。伝説の殺し屋を連れてこないとボス(西田敏行)に殺されてしまう男(妻夫木聡)が、その殺し屋を探すのだが見つからず、撮影だとウソをついて売れない役者(佐藤浩市)を連れてきて殺し屋役をやらせるって設定がもう無理無理というのには目をつぶることにします。だって、それが三谷幸喜のいうシチュエーション・コメディなんだもの。ただ、今回決定的に欠けていたのが最後に劇的なクライマックスを持ってくるというのが出来ていないことなのではないか。例えば『ラヂヲの時間』でいえばラジオドラマの生放送中に造反が起こり、それの辻褄を合わすために作家が奔走するというスリリングな展開。そして見事に盛り上がる結末。『ザ・有頂天ホテル』では、大晦日のホテルを舞台に様々な事件が起こり、それをカウントダウンまでに全て片付けるというクライマックスへ向けての盛り上がりだ。ところが残念なことに『ザ・マジックアワー』はそれに欠けているんだなあ。、う〜ん。『ラヂヲの時間』での音響効果の達人の存在に近い形で、今回は着弾の名人が出てきて、それがクライマックスの鍵になるのだけど、映像にしてみるとそれほどの効果が上がってないような気がする。思いっきり「ウソくさ〜い」と思ってしまうのだけど、まっ、そんなものかという気もして。

        それでもきっちり楽しませてくれるのは、さすが三谷幸喜。あれこれ言わずに楽しめばいいんだけどさ。


June.12,2008 貫地谷しほりはコメディに向いている

        落語好きではあるのだが、NHKの朝ドラ『ちりとてちん』はついに一回も観ることなく終わってしまった。視聴率は悪かったようだが評判は上々だったようだ。主演した女優さんが貫地谷しほりという名前だったというくらいの知識しか私にはなかったのだが、『ちりとてちん』終了後に始まったテレビ朝日の『キミ犯人じゃないよね?』は推理ものだというので観始めた。こちらも主演が貫地谷しほり。推理ものではあるがコメディでもある。テレビの画面を観ていて「あっ!」と思った。貫地谷しほりって、あの『スウィングガールズ』でトランペットを吹いていた子じゃないの。一番高い音が出なくて困っていたところネズミが出てきたのにビックリして思わず力を込めて吹いたところ高い音が出たので、本番でもネズミのぬいぐるみをペットの先に付けていた子!

        思うに『スウィングガールズ』は上野樹里と貫地谷しほりという二人のコメディもできる女優さんを輩出したという上で日本映画界に貴重な貢献をした映画といえる。上野樹里は後にテレビドラマ『のだめカンタービレ』という、もう上野樹里しか考えられない適役を演じることになるのだが、『スウィングガールズ』はそんな彼女の主演だから、観た当時は上野樹里中心に観ていた。それでも貫地谷しほりを憶えていたのは出番や台詞の数からすると上野樹里ほどでないにしても、なんだか印象に残るような存在を示す演技をしていたから。改めてもう一度『スウィングガールズ』のDVDを、上野樹里ではなく、貫地谷しほりを中心にした観方で観直してみた。まあ、このやたら惚れっぽい女の子という設定の役を見事に演じている。そして細かいところで、細かい演技を入れている。特に目の演技は絶対にコメディのセンスがある。中古楽器のチラシをガールズが見いているシーン、アドリブだったそうだがドラムス役の豊島由香梨の舐めていたペロペロキャンディーを無理矢理を舐めてしまうところなど最高に可笑しい(豊島由香梨が本当に嫌がって抵抗していた)。

        『スウィングガールズ』には完成後に撮ったというサイドストーリーという短編映画がいくつかあって、貫地谷しほりはキーボードの平岡祐太とのサイドストーリー。貫地谷しほりには台詞が一切なく、平岡祐太の赤いジャージの糸を本人が知らないうちにほぐしとってしまうという話。『スイング・スイング・スイング』の音楽に乗せてのこの映像での彼女は実に生き生きとしている。

        『スウィングガールズ』の撮影が2003年から2004年というから、当時はほぼ等身大の高校生くらい。あきれるくらい上手い。それから4年、それなりの歳を重ねたが彼女はより上手くなっている。『キミ犯人じゃないよね?』の面白さはもう貫地谷しほりのおかげだろう。映画『銀幕版スシ王子! ニューヨークへ行く』を映画館に観に行こうと思ったら、テレビ版の再放送があったので観ていた。そうしたら第5話と第6話、いわゆる勝浦編に貫地谷しほりが出ていた。ずいぶん前から準備していたようだから、この撮影があったのはひょっとすると『ちりとてちん』より前かもしれない。これがまたもう彼女が出ているだけで無性に可笑しい。コメディが出来て若くてカワイイという女優さんは本当に少ないだけに、彼女は今ひっぱりだこなのかもしれない。

        余談だがこの勝浦編、清水宏は出ているは猫のホテルの役者さんたちは出ているは、その手の小劇団好きの人間にはたまらなくうれしいのだが、もうひとりゲストに赤星昇一郎が出ている。ラストシーンでなぜか赤星が蓑を背負っているのだ。これはもう20年くらい前の深夜番組『ウソップランド』を観ていた者ならすぐに気がつくはずだ。毎回最後に赤星が『ゲゲゲの鬼太郎』の子泣きジジイの格好をして、カメラに向かって「子泣きジジイじゃ、夢見るぞ!」と言っていたのを知っているのは、おそらく今40歳以上の人だけだろう。堂本光一のスシ王子が赤星に「どうしてそんな格好をしているんですか?」と問うと、「そんなことは関係ない!」と叫んで、「夢見るぞ!」とやる。私らは、やんややんやなのだが、30前の彼にはこれはわからないだろう(笑)。もちろん堂本光一にもわからないだろう。

        インターネットは便利なもので、検索をすればすぐにどの役者がどんな作品に出ていたかがすぐにわかる。さっそく検索してみたら、ああ『SURVIVE STILE5+』か。あの岸部一徳の鳥になってしまった男の娘役だ。あれも『スウィングガールズ』と同じ時期に撮影されたものだが、面白い演技をしていた。この春に放送された2時間ドラマ『被取締役(とりしまられやく)新入社員』にも出ていたと書かれてあって、そういえば録画しておいたはずだとハードディスクから観てみたら、こちらはコメディ演技無し。作品のアイデア自体はコメディに近いものがあるのだから、彼女にコミカルな演技をつけてたらもっと面白くなったのではないだろうか? あれじゃあ別に貫地谷しほりを使わなくても、もっといくらでも女優さんはいただろうに。もったいないなあ。作品としてもなんか暗〜い出来だったし。

        『キミ犯人じゃないよね?』は今月で終わるが、来月からは『あんどーなつ』が始まる。当分、貫地谷しほりは方々から出演の依頼がありそうだ。こんなコメディエンヌの出現を待っていたのだよ。


June.4,2008 自分は犯人? 人質?

        WOWOWで『unknownアンノウン』を観た。2006年のアメリカ映画。同年に日本でも公開されているが私は初めてだ。これがちょいと面白かった。

        5人の男がどこかの倉庫のようなところで、次々に目を覚ます。不思議なのは5人が5人とも記憶喪失になっていること。ひとりは椅子に縛り付けられている。またひとりは手錠をかけられ柵に手錠で繋がれているがどうやら銃で撃たれているらしい。他の3人は無事だがどうやら記憶を無くす前に乱闘があったらしい。倉庫は窓にも鍵がかけられていて外に出られないようになっている。

        一方、外の世界では誘拐事件があったらしく、人質になった男の奥さんが警察の指示で身代金を駅のコインロッカーに納める。コインロッカーの周辺を固める刑事たち。そこをまんまんと誘拐犯たちは身代金の入ったカバンを持ち出すことに成功する。ところが警察もさるものカバンの中に発信機を仕掛けてあり、誘拐犯をクルマを追う。

        密閉された場所で5人に男が目を覚ますが状況がわからないというのは、『ソウ』や『キューブ』を思わせるところがあるが、あれとはいささか趣が違う。なぜ5人が5人とも記憶を無くしているかという説明は、一応付けられている。なにかの拍子にガスボンベのコックが開いてしまい、全員がそのガスを吸ってしまったのだ。そのガスを吸うと、一時的な記憶喪失状態になってしまうという説明だ。果たしてそんなガスがあるのかどうかは疑問だが、これを肯定しないとこの設定自体が無くなってしまう。

        やがて、倉庫に置かれていた新聞や、誰かからの電話から、どうやらここは外で起きている誘拐事件の犯人たちのアジトだということに5人は気づく。5人のうちの何人かが犯人の一味であり何人かは人質なのだが、誰が犯人で誰が人質なのかは本人もわからないというのが面白い。

        アジトに戻ってくる仲間からの電話で、夕方にはアジトに戻ると連絡がある。さあて、彼らが戻ってきたときには誰が犯人で誰が人質かわかってしまうのだが、全員が自分は人質側ではないかと思い不安にかられる。それまでに記憶が戻っていればと思うのだが、全員少しずつ断片的に記憶を取り戻していくのだが完全ではない。そこへ仲間が戻ってきて・・・。

        上映時間が86分と短いのはコンパクトでいいのだが、ややバタバタしたまとめ方なのはやや不満が残る。でもこういうヘンテコな設定の話って好きなんだなあ。


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