March.28,2009 釣りをする人と釣らない人の温度差

        私は釣りをした経験はほとんどないと言っていい。知人に誘われて数回、竿を握ったことはあるが、趣味として続けようという気にはならなかった。映画『釣りキチ三平』の中で、三平の姉愛子(香椎由宇)が、釣り糸をたれている三平たちを見て、「なんたる無駄な時間」と呟く心情に近かったような気がする。釣りというものは運不運ではなく、ただ漫然と釣り糸をたらしていても釣れるものではないというのも知っているのだが、どうやったら魚を釣れるかということに時間を割くというのが、私にはそれほど面白いものだとは思えなかったのだろう。とはいえ、原作漫画『釣りキチ三平』は毎週読んでいた。

        映画版は原作の最初の方のエピソード、鮎釣り大会と夜泣谷を映画化したもの。原作にほぼ忠実だと思うが、大きな違いは原作では小さな役柄三平の姉愛子を、まったく違うキャラクターとして登場させたこと。このことで映画自体に膨らみが出てきた。このへんは、脚本家古沢良太の手腕だろう。あの『キサラギ』を書いた人だ。

        姉の愛子は東京に出て大学に通い、就職も決まった。心配なのは故郷に残してきた弟の三平。愛子の目には勉強もしないで毎日釣り三昧をしている三平が心配でならない。東京に連れて行って勉強させようと思っている。しかも父親は釣りに行って死んでしまい、母親もその後を追うように死んでしまったとい過去を持っている。釣りに対して恨みを抱いているという設定。それが夜泣谷に一緒に行く事により、自然や釣りといったものに感動を覚えていくといった展開になる。それが説得力ある演出で描き出される。

        釣りをする人と釣らない人では釣りに対する温度差はかなりはっきりしている。私は釣らない人間だが、この映画を観ていて、改めて釣りをやってみたいと思ってしまった。でも〜、やっぱりやらないだろうなあ。


このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る