June.13,2009 これ、やばくない!?

        新装なった新宿ピカデリーに初めて入った。日曜の夜の上映。新生新宿ピカデリーもシネコン化した。なんと10スクリーンだ。早めに『チョコレート・ファイター』のチケットを買って食事に出ることにする。あまり人気がないのか空席が多く、あっさり買えたが、一番大きなスクリーンで上映する『Rookies 卒業』は売り切れだとか。開演10分前が開場時間だというので、それまでには戻ろうと思ったが、注文したものが出てくるのに思いのほか時間がかかってしまい新宿ピカデリーに戻れたのは開映時間ギリギリになってしまった。焦ったのは上映される第10スクリーンというのが、建物のかなり上の階だということ。エスカレーターを乗り継いで最上階にたどり着いたときには、予告編上映がすでに始まっていた。汗をふきふき自分の席に座る。

        『マッハ!』 『トム・ヤン・クン』のトニー・ジャー監督作品。今回の主人公は女性カンフー・マスターだ。ヤーニン・ウィサミタナン。通称ジージャー。美少女との触込みだが、確かにメイクしたスチール写真は美人というかカワイイ。しかし、映画の中ではメイクは薄め。ひょっとしてスッピン? もっとも役柄が、「心に病を持った少女」あるいは「自閉症」と書かれた解説もあるが、あきらかに脳に異常、というか、これはあきらかに知恵遅れの少女という設定でしょ。

        しかし彼女は特異な能力を持っているという設定。テレビドラマの格闘シーンが大好きで、一度見たシーンを自分で再現できる。彼女の名前はゼン。日本人の父(阿部寛)とタイ人の母の間に生まれた子供。父は訳あって日本に帰国していて、母ひとり子ひとりで生活しているが、母親は白血病を患い闘病生活に入ってしまう。この病気を治すには大金が必要。母親は裏で金貸しをやっていて、方々に金を貸している。ゼンはこの金を取り立てて治療費に当てようとする。なんだか高利貸しの取立て屋という感じなのだが、金を借りていた連中というのも、ハナから金を返す意志などさらさらないという非道ぶり。

        借金を返さない連中をカンフーで倒して、無理矢理に取り立てていく。って、見方によると犯罪じゃない? でもまあいいのだ。そこがタイ映画(笑)。まずは製氷工場での取り立て。このシーンが映った瞬間からカンフー映画好きは一発で、「あっ! 『ドラゴン危機一発』じゃん」と思うに違いない。ここでのゼンはもろブルース・リーのコピー。怪鳥音を発すると軽快なフットワークから、目にもとまらないキックとパンチを繰り出す。あきらかにブルース・リーへのオマージュだ。

        次の取立て先は、なにかの倉庫。ここはジャッキー・チェン風。倉庫の荷物の上を飛び移りながらのアクション。アクロパット風カンフーが楽しめる。

        実はそんな彼女にも弱点があることが明かされる。蝿が大の苦手。蝿の羽音が大嫌いなのだ。次の取立て先が肉屋。店中が蝿だらけ。そんな不衛生な肉屋があるのかと思うが、バンコクといわれると一概に否定できないのだが・・・。ここでは手に包丁を持った男達との戦い。ゼンの棒を使ったアクションも観られる。

        そんな過激な取立てをしているゼンを、バンコクの暴力団組織が快く思わなくなってくる。さて、おつぎは日本料理店での闘い。暴力団組織の放つ格闘技のプロたちとの闘いだ。ここは途中で『キル・ビル』あるいは『マトリックス』での道場のシーンを思わせる。中に、今まで見た事もない特異な型を持つ相手が登場するが、これも相手のパターンを見極めるや、先を読んで技を繰り出すあたり、「やるじゃん!」 後半は阿部寛が刀を抜いて乱入。チャンバラになる。その動きを観て、ゼンも刀を持つ。

        最後が日本人街でのビルの壁を使った闘い。これはかなり危険なアクション。もちろんジャッキー・チェンが入っているという感じだが、相手役はどんどんビルの壁から地面に落ちる。しかもどう観ても地面にクッションなどない。コンクリートの上に建物の三階部分から直接落下している。まさに命がけ。エンドクレジットで地面に落ちて痛みに苦しがっている役者の光景が映し出されるが、本当に痛そう。そこまでして撮るかとも思うくらい。

        観終わって、やばい映画だなあという感想が強い。おそらく相当の怪我人が出ているという思いと、主人公の設定が知恵遅れという、やばさ。すっきりしないのは言うまでもないのだが、それでも「凄い映画を観てしまった」という気分の方が強いかもしれない。だから、人に勧めるときは、こっそり、「やばい映画だよ。でも観てみて」と言うな、きっと 


このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る