36時間(36 Hours) 2014年10月27日 三日月座BaseKOMシネマ倶楽部 1964年作品。初めて観る映画。 原作がロアルド・ダールなんだそうだ。第一短編集『飛行士たちの話』に入っている『犬にご用心』という話。『あなたに似た人』や『キスキス』といった短編集は有名で、私も中学から高校にかけたころに読んでいるが、さすがに自身のパイロットだった経験から書いたという『飛行士たちの話』は未読。『犬にご用心』は10ページくらいしかない短い話で、この映画ほどの広がりのある話ではないらしい。おそらく『犬にご用心』のアイデアから一本の映画用に脚本を書いたということらしい。 連合軍がノルマンディに上陸するのかカレーに上陸するのかを知りたいドイツ情報部が、連合軍の将校ジェームズ・ガーナーを拉致する。拷問にかけても喋らないだろうと判断したドイツ情報部は実に手の込んだことをする。意識を失くさせて拉致したジェームズ・ガーナーの髪を少しだけ白髪に染めてしまう。意識が戻ったガーナーに、もう戦争は連合軍側の勝利で終決し、ここはアメリカ領にある病院で、どうやらあなたはこの五年間の記憶をなくしているようだと告げる。病院内の人たちもみんな英語を喋り、新聞も偽物、ラジオも偽の放送を流しているから、自分は本当に記憶を失くしてしまっているんだと思い込む。そして治療だという名目で、記憶が失う直前、何をしていたのか聞きだす。連合軍はノルマンディに上陸する作戦を練っていたのか、それともカレーに上陸する作戦わ練っていたのか。そしてガーナーはノルマンディだと語ってしまう。 こういうプロットは、のちに『スパイ大作戦』などにより一般的になってしまうが、この映画が作られた時点では珍しかったんだと思う。しかも最初から観る側にネタを割ってしまうという手法も面白い。 そしてこの映画の面白いのは、ジェームズ・ガーナーが上陸地点はノルマンディだと話してしまってから、どうもこれはおかしいと気が付いてから。ノルマンディだと知られてしまったあとに、どう逆転に持って行くか。ドイツ情報部側の幹部の質の悪さ、仲間割れも影響して、実はジェームズ・ガーナーの言うノルマンディはフェイクだろうと思い始めてしまうという脚本が実に巧み。 さらにラストの国境脱出がまた上手い。国境警備員の男の設定が実によく出来ていて、こういう自分のことしか考えない奴っているんだろうなと、笑いながら拍手を送りたくなった。 これはもう脚本の勝利みたいな映画。紙で指を切った痕とか、時計の使い方とかもよくできている。いい脚本というのはこういうものだという見本みたいなものですね。それにしても脚本を担当したという、ルイス・H・バンス、カーク・K・ヒットマン、どちらも検索してみてもほかに何も出てこない。何者なんだろう? 10月28日記 静かなお喋り 10月27日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |