September.26,1999 シン・チー、またラヴコメかい!?
中野ブロードウェイの[ジャスミンティー]へ行ったら、今年のチャウ・シン・チーの旧正月映画、『喜劇之王』のビデオCDが1,950円で売っていた。インターネットで日本公開すると出ていたから、安売りしたのかな?
チャウ・シン・チーとしては、昨年の旧正月映画『行運一條龍』以来だから、丸一年振りの作品。あんなに多作で、いまだに客を呼べる役者が、どうしたことなんだろう。『食神』のハリウッド版リメイクの話で忙しかったのだろうか?
『行運一條龍』は、チャウ・シン・チー主演というよりは、シン・チー含めた三組の男女のラヴ・コメディで、少々がっかりした。ラストは当然ハッピー・エンドで、旧正月映画らしく、登場人物たちが、お互いに「新年あけましておめでとう」なんて言い合う。日本のプログラム・ピクチャーもよく正月になるとこういうシーンがありましたなあ。
今度の『喜劇之王』も同じくラヴコメ。ラストで「あけましておめでとう」も同じ。ただ、今回は確かにシン・チー主役。シン・チーは売れない役者。撮影所でエキストラをやりながら、さっぱり客の入らない劇団も持っている。あるとき、セーラー服パブのホステスから、どうしたら客あしらいがうまくなるか相談される。シン・チーは、セーラー服パブなんだから、気持ちからして女学生になりきらなくてはだめだ。そして、お客さんは初恋の相手を思い出して、接しなければならないと教える。ところが彼女は初恋なんて、したことが無いという。そんなはずない、誰でも初恋の経験はあるはずだといっても、頑なに無いという。実は彼女、初恋の相手にセーラー服パブに売り飛ばされたのだった。やがて彼女とシン・チーに恋が芽生えるという話。それに、カレン・モク演じる大女優とのエピソード、そして、最後に明かされる撮影所の弁当係ン・マンタの意外な正体、それに続くサスペンスとあきさせないのは、さすが。
September.18,1999 ライミ・ファンの喜びと戸惑い
サム・ライミが『シンプル・プラン』を撮るというニュースを耳にした時は、どうなっちゃうんだろう と正直言って不安半分、期待半分。
なにせ、サム・ライミといったら、あの『ダークマン』を撮った人ですよ。もちろん『ダークマン』は私のオールタイム・ベスト・テンに入る、大好きな作品。LDが発売されるのを待ちかねて、発売と同時に買って、以来何回見直したことか。ダイナミックでトリッキーな映像は何回見ても興奮する。
しかし、今度はあの『シンプル・プラン』の映画化だ。今までのように、荒唐無稽な話じゃない。どうやるんだろう。やがてアメリカで公開されて、「どうやら、真面目に撮ったらしいよ」という噂が伝わってきて、「う〜ん、ライミがねえ。あの人、そんな撮りかたできるのかねえ」とますます混乱。ついには、「なかなかの傑作らしい」という話が耳に入ってきて、「ライミ、やればできるんじゃないの!」とうれしくなった。
初日1回目上映、駆け付けたのは言うまでもない。なるほど、原作を一端バラバラにして、組替え直している。主人公のお兄さんの扱いが、だいぶ大きくなっていて、ラストはかなり辛い。驚いたことに、しっかりした人間ドラマになっていた。大いなる感動と共に映画館を出たが、ねえライミ監督、これもいいけど、今までのようなダイナミックなカメラワークが炸裂するような映画も、またお願いしますよ。
September.16,1999 レスリーがポルノを撮った理由
1997年の正月、私は台湾にいた。このときの滞在中、香港映画好きの私にしては、めずらしく一本も映画を見ていなかった。理由のひとつは、これといって見たいものが上映されていなかったためである。唯一見たかったのが、レスリー・チョン主演の『色情男女』。これは上映時間が合わず、見られないままで帰国の日を迎えていた。せっかく来たんだ、このまま日本に帰るわけに行くものか。買い物などは、ほとんど断念し、映画館に入った。
もちろん、中国語英語字幕版。今回、WOWOWで『夢翔ける人 色情男女』というタイトルになって公開されたものが、放映された。日本語字幕版ものを見て、よく解らなかったところまで理解できた。売れない映画監督のレスリーが、金のために嫌々ポルノ映画の監督を引き受ける。しかし、除除にポルノ映画の製作に意欲を持っていくストーリー。
それにしても、なんでポルノ映画の製作現場の話なんて撮ろうと思ったのか。97年の7月に香港の中国返還が決まっていたことが、根底にあったとみるのは、考えすぎだろうか。返還されると、中国政府により、ポルノや暴力を描いた映画が規制される恐れがある。それで、この時期に、どうしても撮っておきたかったテーマだったのではないか。
September.11,1999 黒ずくめは黒い髪に限る
『バウンド』での白ペンキの使い方が映像的に面白かったので、ウォシャウスキー兄弟の新作、『マトリックス』を楽しみにしていた。今回は、『ブルース・ブラザース』『M.I.B』に通じる黒ずくめのコンビが目を引く。それもスーツではなく、戦闘服。これがカッコイイ。キアヌ・リーブスもキャリー=アン・モスも髪の色が黒。やっぱり黒ずくめのファッションには黒い髪だ。それに黒のサングラス。これもカッコイイ。
香港から、殺陣師ユアン・ウー・ピンまで呼んできて、カンフー・アクションも、2丁拳銃の銃撃アクションも、実に香港映画的なんだけど、うまくハリウッド的に丁寧に映像処理をしている。続編も、もう二本撮ることが決まっているそうで、その時は是非、解り難いこの世界の設定を、もう少しすっきりと理解できるようにしてほしい。
ちなみに、さぞや香港で受けただろうと思われるこの映画、確かにヒットしたのは間違いないが、上映した時期が悪かった。何とそのころ、日本映画『リング』が香港で大ヒット。結局『リング』が4/29から6/30、63日間の上映で31,243,039HKドルだったのに対して、『マトリックス』が5/20から6/30、42日間の上映で15,262,386HKドルと興行収入は倍以上ひらいてしまった。
September.6,1999 同じような脚本で大丈夫?
前売り券を買っていたのに、時間がなくてなかなか見にいかれなかったら、『パラサイト』はもう今週で終了だという。慌てて見に行ってきた。これって本当にロバート・ロドリゲス? ロドリゲスといったら、『デスペラード』とか『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を思い返してみれば、 主人公達が超人的に強いってイメージがありませんか? ところがこれ、主人公達がみんな、ひ弱な学生で、ほとんどやられっぱなし。
というのも、脚本が、『スクリーム』『ラストサマー』のケビン・ウィリアムソン。もう基本的な構成がおんなじ。殺人鬼がエイリアンに代わっただけ。『スクリーム』が、過去のホラー映画を引用した会話があったように、今回は、ジャック・フィニィ『盗まれた街』、ロバート・A・ハインライン『人形つかい』といった過去の侵略物SFを引用した会話が出てくる。誰でもいいような犯人(?)(笑)捜しまで、やっぱりある。ケビン・ウィリアムソンって学園物ホラー専門になってきた。
ジョーダナ・ブリュースターって見たことない女優さん、デミ・ムーアを若くしたみたいで、きれいな人ですね。