バードマン あるいは(無知がもたらす奇跡) (The Birdman or The Unexpected
Virtue Ignorance) 2015年4月14日 TOHOシネマズ日本橋 アカデミー賞の、作品賞、監督賞などを取った今年の話題作。それにつられて観に行った人はおそらく、かなり賛否両論に分かれてしまうに違いない。きっと多くの人が「なんだかわけわかんない」と言いだしそうな気がする。だからこの作品をアカデミー作品賞に選んだというのは大きな決断だと言うほかありません。 かつて『バードマン』というヒーローもの映画で当てたリーガム・トムソンという男が、演技力のある俳優として認めてもらいたくて、ブロードウェイの舞台に立つ。選んだ演目はレイモンド・カーヴァーの小難しい台詞劇。これを『バットマン』のマイケル・キートンが演じるという時点で可笑しい。バードマンとバットマン。映画の中でバードマンに扮したマイケル・キートンの姿も出てくるが、それがもうフェイスマスクがバットマンそっくり。これってつまりコメディとして肩の力を抜いて観ていれば、かなり面白い映画。この映画は何を言いたいのだろうとか思わないで気軽に観た方がいいんだと思う。 急遽相手役として選ばれたマイク・シャイナー(エドワード・ノートン)という男も才気走り過ぎる結果、芝居自体をメチャクチャにしそうな男。こういう役者って、いかにもいそうではないか。しかも女と見れば誰とでも寝たがる節操の無さ。 トムソンの娘で付き人のサム(エマ・ストーン)は、父親の古い考えに疑問を感じている。ツイッターもフェイスブックもやらない父親は時代遅れ。いくら舞台で自分の俳優としての実力を見せつけようと思っても、地味な広報活動だけでは、今の時代、客は見向きもしないということを知っている。ちょっとしたことがキッカケでネットに話題になるだけで、今は話題になりお客さんは観に来る。そんな事件が途中で起こるのも可笑しい。 お客さんだけじゃない。評論家なんていうのもいい加減だ。ヒーロー映画の俳優が、ブロードウェイで小難しい芝居をやるなんていうものに偏見を持っている。でもそれがちょっとしたハプニングで酷評が絶賛に変わる。 そういったショウビジネスの滑稽さを、ちょっと変わった手法で描いて見せたのが、この映画なんじゃないかと思う。それを面白いと思うか、つまらないと思うかは、観る側に委ねられているもので、それこそこの映画の持っている二重の仕掛けなのかもしれない。 全篇ワンカット(のように見せかけているだけなのだが)で撮ったというのも人を食っていて面白い。それを含めて楽しめる人だけ楽しめれば、それでいいんじゃないかな。 4月14日記 静かなお喋り 4月14日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |